2022 Fiscal Year Research-status Report
中間圏および下部熱圏の温度構造形成機構における大気微量化学種の役割
Project/Area Number |
22K14100
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
安井 良輔 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 研究官 (10894488)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | MLT領域 / 超高層大気 / 大気化学 / モデル開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目標である中間圏・熱圏の温度構造形成の理解に向けて、2022年度は主に大気大循環モデルへの化学輸送スキームの導入を行なった。具体的には、対流圏から電離圏をカバーする中性大気-電離大気結合モデルGAIA(Ground-to-topside model of Atmosphere and Ionosphere for Aeronomy)にCO2、CO、NOX、O3、HOX、H2、H2OやH2O2等の大気微量化学種の化学反応・輸送スキームを組み込んだ。熱圏で重要な光化学反応については、FISM2およびNRLSSI2のEUV/UVフラックスを外部強制として、光化学断面積のデータセットを使用して精緻に計算を行なった。組み込んだ化学輸送スキームを用いて、CO2/CO反応系のシミュレーション結果を確認した。得られた結果は、CO2濃度がおよそ高度70km付近から高高度に向けて減少し始め、一方CO濃度は増加することがわかった。また、CO濃度は夏極の110km付近で最大となり、長い日照時間によって多くのCOが生成されることがわかった。中間圏や下部熱圏では、子午面循環に従って輸送され、緯度高度分布を形成することがわかった。またO3については、昼間の中間圏界面付近において濃度が減少しており、夜間になるとO3濃度が回復する様子がみられた。シミュレーションで得られたこれらの濃度分布を、衛星の赤外線放射の観測から得られる濃度分布を用いて検証を行なった。衛星観測による分布とシミュレーションが同様の分布をしており、シミュレーションによって得られる結果の妥当性を確認した。 これらの進捗状況および結果について、日本気象学会秋季大会で発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の計画であった中性大気-電離大気結合モデルGAIAへの化学種の導入については、化学種の導入だけでなく、化学反応スキームの導入や、太陽放射データによる光化学反応の導入、輸送スキームの構築までできており、また、衛星観測を用いた比較も行っており、計画通りに進んでいる。一方で、2023年度導入予定の化学種を用いたnon-LTEスキームについては、まだ準備ができていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度で開発した化学種の濃度分布により、non-LTEの放射スキームを構築する予定である。本研究で示した結果は、2022年度前半で行なった内容であり、2022年度後半は他の業務により本研究に時間を割くことができなかった。2023年度も同様のスケジュールになる予定のため、早めに取り掛かる予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、モデル開発がメインとなっており、外部のスーパーコンピュータを使用しなかったため、スーパーコンピュータの使用料分の差額が生じた。2023年度は、実際に外部のスーパーコンピュータを用いて開発したモデルの長期積分を行ない、大気微量成分の太陽活動による変動などを確認する予定である。
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