2023 Fiscal Year Research-status Report
中間圏および下部熱圏の温度構造形成機構における大気微量化学種の役割
Project/Area Number |
22K14100
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
安井 良輔 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 研究官 (10894488)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 大気化学 / 中層大気 / 超高層大気 / モデル開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目標である中間圏および熱圏の温度構造形成の理解に向けて、2023年度は主に大気大循環モデルへの化学輸送スキームの導入を引き続き行なった。具体的には、昨年度同様に対流圏から電離圏をカバーする中性大気-電離大気結合モデルGAIA(Ground-to-topside model of Atmosphere and Ionosphere for Aeronomy)を用いて、昨年度開発した光化学反応スキームの計算高速化を行なった。観測された太陽放射フラックスおよび光化学反応断面積をそのまま使用すると、計算時に約2000binの波長について光化学反応生成量を計算する必要があったため、非常に計算に時間がかかっていた。そこで、波長のbinの区切りを変更し粗視化することで、計算量の削減を実行した。波長の区切りは、太陽放射のライマンα領域において、元の波長分解能を保つことで、計算精度の悪化が防げることがわかった。 また、熱圏の温度構造形成の理解に重要である、大気潮汐波の年々変動の解析も合わせて行なった。宇宙からの外部強制の影響を除くために、中間圏界面付近までデータ同化を行なっているJAGUAR-DASデータを使用した。中間圏界面付近では、QBOと太陽同期潮汐波DW1の変動には相関があり、赤道の高度30㎞まで高い相関を持っていることがわかった。また、DW1の位相変化については、QBOと大きな相関はないことがわかった。 これらの進捗状況および結果について、2024年度の日本気象学会春季大会で発表を行なう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度の計画であった中性大気-電離大気結合モデルGAIAへの化学種の導入については、今年度で終了する予定であったが、スーパーコンピュータの計算環境に対応させるため、モデルのソースコードを大幅に書き換える必要があった。そのため、化学反応スキームのNOXについてはまだ導入できておらず、計画よりも少し遅れている状況である。一方で、NOXを導入することができれば、電離圏モデルで導入されているイオン種との反応の計算ができ、熱圏の温度分布の表現がよくなると考えられるため、NOXを導入することで、一通り化学輸送スキームの開発が完了となる。また、本研究で組み込んだ化学種を用いたnon-LTEスキームについては、まだ準備ができていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度で組み込み予定であったNOXを導入し、化学輸送スキームの開発を完了させる予定である。また、non-LTEの放射スキーム構築については、化学輸送スキームの開発と並行して行なえるため、そちらについても構築を進める予定である。2023年度は他の業務により本研究に時間を割くことが難しかった。2024年度も同様のスケジュールになる予定のため、早めに取り掛かる予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は、モデル開発がメインとなっており、外部のスーパーコンピュータを使用しなかったため、スーパーコンピュータの使用料分の差額が生じた。2024年度は、実際に外部のスーパーコンピュータを用いて開発したモデルの長期積分を行ない、大気微量成分の太陽活動による変動などを確認する予定である。
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