2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14110
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
高野 智也 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (80905604)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 潮汐応答 / 地震波速度変化 / 常時微動 / 状態空間モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,日本全域に展開されているHi-net地震観測点796点を用いて,地震波速度変化の地球潮汐応答の空間分布を推定した.この研究により,研究課題の目的を達成するための,地震波速度変化の潮汐応答を抽出する手法を確立した.
状態空間モデルに基づきカルマンフィルタと最尤法を組み合わせた手法により地震波速度変化の潮汐応答を広域に推定することができた.1時間ごとの常時微動の自己相関関数から状態空間モデルを構築し,説明変数として潮汐周期で変動する地震波速度変化を組み込んだ.ここでは,潮汐による速度変化量,速度変化と潮汐の位相差をモデルパラメータとして,カルマンフィルタの計算過程で最尤法により決定した.
潮汐による速度変化は0.01%以上で見られることがわかった.本手法により,潮汐による速度変化が検出される基準を提示することができた.得られた潮汐による速度変化率と,各観測点で理論計算した潮汐歪量から,各観測点における地震波速度変化の潮汐歪み応答を推定した.得られた潮汐歪み応答は1e3から1e5[/strain]の値で変動していた.また,大局的に浅部のS波速度が遅い領域で潮汐応答が大きい傾向が見られた.潮汐応答の大きい地域は,高い間隙流体圧やアスペクト比の低いクラックの存在を示唆するものであると解釈される.本研究成果を国際誌に投稿し,採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の目的を達成するための手法の根幹をなす,地震波速度変化の潮汐応答を抽出する手法を確立することができ,またその成果が国際誌に採択された.この手法では,1時間ごとの常時微動記録の相関関数波形を状態空間モデルに組み込み,説明変数として組み込んだ潮汐による速度変化量をカルマンフィルタと最尤法を用いて決定した.本手法を日本全国の基盤地震観測網に適用し,その有用性を実証した.また,得られた潮汐応答の空間分布が日本列島下の構造と大局的に対応していることを観測した.以上より,研究課題は概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,これまでの研究で構築された地震波速度変化の潮汐応答を抽出する技術を本研究課題の対象領域である米国中西部ラトン盆地の連続地震記録に適用する.この地域では工場排水の地下注入されている.そこで,この地域で得られる地震波速度変化の潮汐応答と,これまでの研究で得られた日本全域の潮汐応答を比較し,地下水量が地震波速度変化の潮汐応答に寄与する影響を調べる.
また,短期間ごとに連続地震観測記録を分割し,各期間で地震波速度変化の潮汐応答を推定する.得られた潮汐応答の時間変化と地下注水量の時間変化を比較し,地下注水による間隙流体圧力が潮汐応答に与える影響を議論する.
その後,新たに地震波速度変化の潮汐応答を状態変数として状態空間モデルに組み込み,潮汐応答の時間変化が状態変数として高時間分解能で推定できるか検証する.
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Causes of Carryover |
当該年度では手法の開発や有用性の検証を主に行なっていたため,既に有していた計算資源により研究を行うことができた.そのため,当初予定していた計算機の購入を行わなかったので,次年度使用額が生じた.次年度では,計算資源を新たに購入しデータ解析を邁進していく予定である.
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