2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14118
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 大志 京都大学, 防災研究所, 助教 (60804896)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ブルカノ式噴火 / 放出岩塊 / 火口内溶岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に検討した空気振動パルスの一回積分値ピーク(Imax)と岩塊放出速度(Vmax)の関係について、ブルカノ式噴火に伴う岩塊放出の理論モデルに基づいて両者の関係を定量的に考察した。衝撃波管問題を応用した理論的研究(Alatorre-Ibargengoitia et al., 2010)に基づき、モデルから期待される圧力積分と岩塊初速度の関係を用いてImaxとVmaxの関係を検討した。モデルは一次元問題であるため、実際の現象に適用するにあたりはモデルの枠組みで岩塊が運動する範囲を火口地形内までとするなどの仮定を置いた。 観測された桜島火山と諏訪之瀬島火山のImaxとVmaxの関係をモデルに基づいて考察すると、両火山での観測値の分布は単一の爆発深度で圧力を変化させるだけでは説明できず、Vmaxが大きいイベントほど爆発深度も大きいという特徴がある。対象イベントの最大規模の場合は爆発深度が10 mとなり、この深度より上部が全て溶岩で満たされていたとすれば、その体積は104 m3程度と概算される。溶岩の密度を2500 kg/m3と仮定すれば、107 kg程度の質量に相当する。この量は桜島における個別の噴火における火山灰放出量と比べて著しくかけ離れた値ではなく、火口内や浅部火道における溶岩量の推定値とみなせるかもしれない。ただし、モデルにおける爆発深度の増大は岩塊の加速により時間が必要であることを意味するため、圧力積分を増大させるための見かけの特徴である可能性も指摘できる。 Imaxの増加が反映する揮発性成分量の増大はあくまで空気振動は揮発性成分の挙動を主として反映することが想定されることから、溶岩流出量を検討するという目的ではより直接的な検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
空気振動観測による岩塊放出速度の検討を通して、火口内の溶岩溢流量と結びつくかもしれない知見が得られている点は評価できる。しかし、溶岩流出量の推定を主眼とした内容ではなく、その点においては遅れがあると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究実績の内容については国際誌へと投稿し、Imaxを説明する爆発深度は現実的な溶岩量の推定値を与えうることを併記する。ただし本課題で主眼とする溶岩流出量の推定手法開発自体としては遅れていることから、以下の観点で今後の研究計画に関わる方針を再検討した。
国内外の他の火山の事例や先行研究を参照すると、溶岩流出には火道と流体の間の摩擦の影響が想定される。この考えに基づくと、本研究が当初に推定目標として想定した低噴出率の溶岩噴出とは、なんらかの条件で火道との摩擦が流れ場全体に対して著しく低い場合にしか存在し得ない。火道径はその条件についての重要な変数である可能性がある。 また溶岩流出量推定手法の検討として、溶岩流出に伴う間欠的なガス放出という現象に主眼を置いた計画を想定していた。この現象は、マグマがガスを十分に含んで地表浅部まで到達できる、連続的なガス放出にはならない、という2つの条件を満たす必要がある。言い換えると、この両条件を満たす噴出率、火道径などの諸条件について過去事例を再検討、整理する余地があると言える。また火道との摩擦が溶岩噴出の影響を及ぼすと考えれば、摩擦係数と圧力の関係によってより巨視的な間欠性が生じることも想定される。こうした観点から、観測量と溶岩噴出量の関係と推定手法について検討を進める。
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