2023 Fiscal Year Research-status Report
核マントル熱進化解明を目指した巨大斜長石単結晶による古地磁気強度復元
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22K14124
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 由多加 九州大学, 比較社会文化研究院, 学術研究員 (90911496)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中央インド洋海嶺 / 古地磁気強度 / 古地磁気強度年代推定 / 鉱物単結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中央インド洋海嶺の玄武岩に記録された古地磁気強度を測定する実験を行った。この玄武岩は、中央海嶺の拡大軸上に存在する円錐形小火山の複数のサイトで「しんかい6500」によって採取されたものである。追加実験によって、一般的に必要とされる1サイトにつき3個以上の古地磁気強度が得られたため、サイトごとに平均値を求めた。2サイトの平均古地磁気強度は近い強度を示したため、その強度の差と最近の地磁気強度変化率に基づき、これらの玄武岩はほぼ同時か数百年の間隔をあけて噴出したと解釈した。さらに、それらのサイト平均値と最近の地磁気モデル・数千年から数万年の古地磁気モデルとを比較することにより、拡大軸上の円錐形小火山が紀元前7575年から紀元前1675年、あるいは紀元前25年から紀元1590年に噴出した可能性があると結論づけた。この成果は国際誌Earth, Planets and Spaceから出版された(Yoshimura & Fujii, 2024, doi: 10.1186/s40623-024-01963-3)。
また、2023年9月上旬に伊豆大島において野外調査を実施した。この調査では、巨大な斜長石が含まれる1986年に噴出した溶岩流Aの観察、および小さい斜長石を含む溶岩流Bの採取を試みた。溶岩流Aの転石に1cm未満の斜長石が含まれることを確認した。また、溶岩流Bからは5個の試料を採取した。今後はこれらの試料の古地磁気強度測定を全岩・斜長石単結晶の両方によって行い、1986年当時の地磁気強度記録の確度を調べる。また、溶岩流Aについては特別保護地区の内部に位置するため、東京都環境局に岩石採取の申請・届出を行い、今後の調査で採取を行う予定である。
さらに、巨大な斜長石を含む応神ライズとエチオピア洪水玄武岩の玄武岩試料から斜長石単結晶を分離する作業を行い、今後行う予定である鉱物単結晶古地磁気強度測定の準備を行った。今後、これらの試料の岩石磁気の特性を調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本において液体ヘリウムの入手困難な状況が続いている。それに伴い、九州大学に設置されている超伝導量子干渉磁力計(SQUID磁力計)が運用を停止していたことにより、当初行う予定であった巨大斜長石単結晶を用いた古地磁気強度測定が実施できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の末になり、液体ヘリウムの入手困難な状況が次第に改善されつつある。そこで、SQUID磁力計の運用が再開され次第、巨大斜長石単結晶を用いた古地磁気強度測定を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画にある「斜長石単結晶古地磁気強度測定」はまだ実施できていないが、代わりに研究課題を補強する研究を行った。今回の次年度使用額はその研究に必要な支出を行った結果生じた残額である。次年度は、研究計画にある「斜長石単結晶古地磁気強度測定」に関する消耗品や旅費、そして論文投稿や学会発表に使用する予定である。
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