2023 Fiscal Year Research-status Report
生体金属ニッケルの安定同位体比を用いたメタン生成菌探査への挑戦
Project/Area Number |
22K14136
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宮嶋 佑典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (60826056)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ニッケル / 安定同位体 / メタン生成菌 / 水素資化型メタン生成 / 酢酸発酵型メタン生成 / メチル基栄養型メタン生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、メタン生成菌の培地および菌体のNi同位体比を分析する手法の確立を行った。前年度にテストしたNiの分離精製法を用いて、同位体比既知のNi標準物質を添加した培地からNiを分離精製し、Cu外部補正法を用いて安定同位体比を測定した結果、添加した標準物質の値と整合的な同位体比が得られた。また、Ni同位体比既知の植物プランクトン標準物質についても測定を行い、誤差の範囲内で参照値と一致する同位体比が得られた。確立した手法を用いて、実際にメタン生成菌と培地のNi同位体比を分析し、同位体分別係数を算出した。メタン生成経路によるNi同位体分別係数の違いを明らかにするため、メタン生成菌Methanosarcina barkeriについて、メタノール、酢酸、水素・二酸化炭素の3種類を基質として与えた培養を行い、それぞれ培養前後の培地と菌体のNi濃度、同位体比を測定した。培養前後でNi濃度に大きな差が見られなかったことから、培養終了時の培地と菌体の同位体比の差を正味の同位体分別係数とみなし、3経路の比較を行うことができた。メタン生成菌では種間でメタン生成経路に違いがあるため、この知見はメタン生成菌の種間での分別係数の違いを考察するうえで重要である。今後は、3経路のうち最もメタン生成菌の増殖の速いメタノール経路について、Ni濃度や温度(成長速度)を変えた培養実験を行い、より天然の環境に近い条件でのNi同位体分別を調べる予定である。また、メタン生成菌以外にNi含有酵素を持つ他の微生物によるNi同位体分別についても実験を行い、メタン生成菌との違いを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は標準物質を用いて、実試料(メタン生成菌の培地・菌体)に近いマトリックス条件での前処理・分析テストを行った。分離精製後のNiにCuを添加しMC-ICP-MS分析時の外部標準として用いることで、参照値と整合的な値が安定した精度で得られることを確認することができた。実試料の分析では、メタン生成菌Methanosarcina barkeriについて水素資化型、酢酸発酵型、メチル基栄養型の3種類のメタン生成経路で培養を行い、それぞれ培養前後の培地と菌体のNi同位体比を分析した。培地と菌体の同位体比の差から各経路でのNi同位体分別係数を算出し、本年度の目標であったメタン生成経路の違いがNi同位体分別に与える影響を明らかにすることができた。当初は培地と菌体のNi濃度・同位体比の時系列変化を見る予定であったが、今回の条件では培養前後で培地のNi濃度・同位体比に大きな変化が見られなかったことから、培養後の培地と菌体の同位体比の差を正味の分別係数とみなした。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では培地にNiを十分量添加した条件下で培養を行っているため、今後はメタン生成菌の生息する天然環境(海底下堆積物間隙水)になるべく近い低Ni濃度でのNi同位体分別を調べる。培養温度についても、現状ではメタン生成菌の生育に最適な条件で行っているため、より低温で成長速度の遅い条件での同位体分別も調べる予定である。また、メタン生成菌以外にNi含有酵素をもつ他の微生物についても、Niを添加した条件下で培養を行い、培地と菌体のNi同位体分別係数を算出してメタン生成菌と比較を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、本研究課題に関連した学会発表を行わず、当初計上していた旅費に未使用額が生じたため。次年度使用額は消耗品費として使用する計画である。
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