2023 Fiscal Year Research-status Report
疲労強度データベースと機械学習を活用した織物複合材料の材料評価システムの開発
Project/Area Number |
22K14144
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
向山 和孝 大阪大学, 大学院工学研究科, 特任研究員 (80743400)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 一方向炭素繊維強化複合材料 / 開繊織物複合材料 / 疲労損傷モデル / 疲労寿命予測手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,繊維強化複合材料の疲労特性に着目し,単純構造を有する一方向繊維強化複合材料の疲労特性と数値解析手法のみから,複雑構造を有する織物複合材料の疲労寿命と損傷挙動を予測すること,さらにはマテリアルズ・インフォマティクスの観点から機械学習に基づく高疲労特性を有する織物複合材料の自動探索システムを開発することにより,疲労寿命と損傷挙動の関係性の解明,材料開発・設計期間の短縮化を目指している. 今年度は,①疲労寿命予測手法の構築に向けた検討,②大標本データに基づく炭素繊維強化一方向材の疲労損傷モデルの構築,③損料力学に基づく有限要素法による疲労寿命予測手法の構築を実施した.①では,損傷力学に基づく有限要素法を用いて,静的な一軸引張荷重と4点曲げ荷重下における母材の材料非線形性を考慮した開繊織物積層材の損傷進展挙動を評価することで疲労寿命予測手法の構築に向けた検討を進めた.②では,これまでの成果で得られた一方向材の大標本データに対してS-N直線モデルを回帰し,さらには,疲労強度が正規分布に従うことを前提とした破壊確率に基づくP-S-N直線を作成することで疲労損傷モデルを構築した.P-S-N直線内にすべての大標本データが収まることから妥当な直線を得ることができた.③では,本疲労損傷モデルを損傷力学に基づく有限要素法に実装し,疲労損傷判定則と組み合わせることで疲労寿命予測手法を構築した.本手法に一方向材の破壊確率50%におけるS-N直線と開繊織物複合材料の有限要素モデルを適用することで疲労寿命予測を行い,本手法の検証と妥当性確認を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では3年間で次の4項目に取り組む予定としている.(1)一方向材の疲労強度データベースと統計的手法による大標本データの構築,(2)大標本データに基づく一方向材の疲労損傷モデルの構築,(3)損料力学に基づく有限要素法による疲労寿命予測手法の構築,(4)機械学習による材料自動探索システムの構築と妥当性・有効性の実証. 本年度は,(2)と(3)の達成を目標とし,開織織物複合材料を対象とした静的荷重下の損傷進展解析により材料物性,織構造の幾何学的形状,境界条件や最終疲労破断判定条件である剛性低下割合を検討し,さらには,大標本データからS-N直線回帰モデルに基づく一方向材の疲労損傷モデルの構築を進め,その疲労損傷モデルを損傷力学に基づく有限要素法に実装することができた.疲労寿命予測手法の検証と妥当性確認は引き続き行う予定であるが,上記の進捗状況からおおむね順調であると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は最終年度であるため実施項目(4)機械学習による材料自動探索システムの構築と妥当性・有効性の実証を主に取り組む予定である.引き続き,織物複合材料を対象としながら構築した疲労寿命予測手法の検証と妥当性確認を,疲労損傷判定則,最終疲労破断判定条件,織構造の幾何学的形状,材料物性の観点から行う.これらは疲労寿命予測結果に大きく影響を与える因子であるため,必要に応じて疲労損傷モデルを含めて改善を行う.そして,最終目的である高疲労特性を有する織物複合材料の自動探索システムを開発するにあたり,機械学習アルゴリズムの検討と機械学習アルゴリズムへの疲労寿命予測手法の実装を目指す.機械学習アルゴリズムについては,ベイズ最適化だけでなくニューラルネットワークなど,他のアルゴリズムも含め検討,選定し,アルゴリズムに応じた入出力条件を見定めながら,自動探索システムの構築を目指す予定である.
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Causes of Carryover |
今年度は物品費と旅費を計上していたが,疲労寿命予測手法の構築の途中段階においては想定よりも計算機の負荷が小さく,計算機の購入を再検討したため,当初の見込み額と使用額に差が生じた.この未使用額は,疲労寿命予測手法や機械学習が本格的に稼働予定となる2024年度に計算機の購入のために使用する予定である.
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