2023 Fiscal Year Annual Research Report
HELP理論を用いた水素のモデル化に基づく疲労き裂発生加速機構の解明
Project/Area Number |
22K14151
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
蓮沼 将太 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (50709764)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 水素 / 疲労 / 転位 / き裂発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギーの活用のために,燃料電池自動車や風力発電などに注目が集まっている.これらの機器において問題になるのは,超高サイクル疲労強度に及ぼす水素の影響である.水素により疲労き裂発生寿命は低下するが,そのメカニズムは解明されていない.本研究では,HELP(水素助長局所塑性変形)理論に基づき水素の影響をモデル化することで,疲労き裂発生に及ぼす水素の影響を解明することを目的とする. 本研究では水素拡散解析を用いて転位に及ぼす水素の影響をモデル化および転位動力学法を用いた疲労き裂発生シミュレーションを行った.転位に及ぼす水素の影響のモデル化については,「転位間相互作用の減少」と「転位の易動度の増加」をモデル化した.「転位間相互作用の減少」については,二つの転位に対する二次元解析を行い,転位周りの水素分布を計算した.その水素分布を基に,水素によるせん断応力を計算した.転位の位置を変えた解析を行い,転位間距離,転位間角度と水素によるせん断応力の関係を数式化した.「転位の易動度の増加」については,Balらの分子動力学解析の結果を基に,水素濃度と転位の移動速度の関係を数式化した.転位動力学法を用いた疲労き裂発生シミュレーションについては,上記のモデルを転位動力学法に導入し,シミュレーションを行った.その結果,水素によって疲労き裂発生が加速することが明らかになった. 実際の転位は三次元で運動する.そのため,二次元解析ではフランクリード源やジャンクションなど転位の複雑な現象を再現できない.そこで,本年度は3次元転位動力学法に水素の影響を導入し,応力ひずみ関係に及ぼす水素の影響を検討した.水素により「転位の易動度が増加する」として水素の影響をモデル化した.その結果,水素が増加するほど0.2%耐力は減少するが,水素量が一定以上になるとその減少は飽和することが明らかになった.
|