2022 Fiscal Year Research-status Report
特殊屈折率樹脂を用いた研削液挙動の新たなその場観察手法による評価
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22K14164
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
猪狩 龍樹 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 助教 (40850342)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 研削加工 / 研削液 / 観察方法 / 接触弧 |
Outline of Annual Research Achievements |
研削液は研削加工中の冷却,潤滑,切り屑排出等多くの役割を担い,高品質な加工は研削液なしでは難しい.しかし,研削液の供給状態を,接触弧内の直接観察して知ることは困難であるため,十分な量となるよう高圧で多量に供給している.結果として,切削・研削液ポンプの消費電力が非常に大きくなり,液の処分等も含め,環境負荷が大きい.また,観察の難しさから,研削結果に基づく「適切な研削液供給状態」の具体的な状態は明らかになっていない.本研究の目的は,特殊樹脂を被削材に用いて,接触弧内の直接観察により行いこれを解明し,適切かつ効率的な研削液の供給方法を設定する指針を得ることである. 令和4年度は撮影方法の確立に取り組み,研削液供給下で回転中の円筒砥石の外周面を,透明な被削材裏側から撮影可能な実験装置を製作し,撮影条件を検討した.被削材裏面から複数のファイバー光源を用い,高速度カメラの撮影に十分な光量を供給した.また,被削材裏面において光源の光の散乱等により撮影が妨げられることを防ぐため,裏面が平滑な材料を被削材として使用し,斜め方向から光を入射させた. 回転中の砥石の気孔を観察に関して,砥石周速度が1050m/min程度の場合,比較的大きい気孔を持つ砥石に関しては,当初想定したより低いシャッター速度とフレームレートである10万分の1秒,15,000フレーム/秒程度で撮影可能であった.また,研削液供給下において,砥石と被削材の接触弧前部において研削液が砥石内部(気孔)に供給される様子,後部において砥石から排出される様子を観察できた. これにより,来年度以降の研削液の挙動の観察に向け,撮影環境の整備が完了した.また,撮影に必要なカメラの要件の確定により,短期間の賃借の予定であったハイスピードカメラについて,購入により長期間実験に供することが可能となり,次年度以降の研究の大幅な研究内容の充実が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,被削材にアクリルではなく,本来なら水と屈折率が等しい特殊樹脂を用いる予定であった. 樹脂は主にNOK株式会社製のMEXFLONを想定していたが,供給や他の問題で入手困難となった場合に備え,AGC製のCYTOPも同時に被削材の製作方法等について検討していた.しかし,MEXFLONは製造時の不具合のために供給が難しい状態となっており,CYTOPについては中国で生産している原材料の入手が困難となっており,どちらの樹脂についても入手が困難な状態が続いている.そのため,これらの樹脂を使用した実験は実施できてない. これらの樹脂の代わりに,今年度はアクリル樹脂を使用して実験を行ったが,研削痕等の屈折率の違いによる撮影時の見え方の変化等については全く検討できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究において,屈折率が大きく関係しない撮影条件については,アクリル板を使用して検討をすでに行った.今年度は液量,液膜厚の定量化を行う予定であるが,これもアクリル樹脂を用いて実施可能である.したがって今年度の研究においてはアクリル板を用いて計画通りに行う予定である. しかし,最終年度において樹脂の供給難が継続した場合,実施計画の変更が必要である.その場合,研削液,被削材に水と特殊樹脂以外の屈折率が等しい組み合わせを使用することを検討している.例えば,ガラスとリノール酸を用いる,または水に薬剤を添加して屈折率を変更するという方法である.
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Causes of Carryover |
令和4年度における当初の物品費の使途は,被削材の購入とカメラの貸借費用であった.しかし,被削材に関しては「進捗状況の理由」で述べた通り,種々の理由から入手が困難となった.また,ハイスピードカメラのレンタルに関しては,撮影条件の検討が進んだ結果,購入可能な価格帯のカメラで十分に目的が達成可能であることが明らかとなった.レンタルの場合では1年あたり1週間程度の借用期間となり,必要最低限の実験しか実施できないことが予想されたが,購入によりその制限が無くなり,大幅な研究内容の充実が可能となる.令和4年度にハイスピードカメラの購入を行う予定であったが,半導体の不足等の理由から年度内の納品が難しく,昨年度の購入を断念した. 上記の通り,被削材とハイスピードカメラの購入が困難であったため,次年度使用額が生じた.令和5年度では,ハイスピードカメラを購入予定である.しかし,被削材に関してはすぐに状況が改善することが見通せないため,状況による.また,昨年度は機材の調達などの困難もあり,国際学会,論文等の発表が難しかった.令和5年度は,年度後半において国際学会での発表や論文の投稿を行う予定であり,そのための旅費,投稿費用等を科研費から拠出する予定である.
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