2022 Fiscal Year Research-status Report
乱流構造に基づく高レイノルズ数乱流境界層の壁面近傍モデリング
Project/Area Number |
22K14175
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前山 大貴 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (80912360)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乱流境界層 / 高レイノルズ数流れ / 壁面モデル / LES |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,剥離・再付着を伴う高レイノルズ数乱流境界層流れを高精度に予測可能なLES(large-eddy simulation)に向けた壁面モデルの開発である.乱流境界層の剥離・再付着現象は壁面近傍における瞬間乱流構造が重要な因子となるため,壁面モデルLESの剥離・再付着現象に対する予測精度を理論的に明らかにするためには,壁面モデルLESで予測される壁面近傍乱流構造とその乱流生成機構に対する学術的な理解が必須であると考えられる.令和4年度は壁面モデルLESの乱流生成機構を解明するため,壁面モデルLESで計算される壁面近傍乱流構造を調査した.壁面モデルLESと直接数値計算(DNS)を用いてゼロ圧力勾配下の平板乱流境界層の解析を実施し,レイノルズせん断応力を構成するQ2成分(低速ストリーク)とQ4成分(高速ストリーク)が同時にペアとして存在する条件下で条件付き平均を行った.その結果,壁面モデルLESにおける壁面近傍流れ場は完全に無秩序ではなく,DNSと同様の壁面近傍秩序構造(低速領域と高速領域が隣り合ったストリークのような構造)が統計的に存在することが明らかとなった.壁面モデルLESの壁面近傍瞬間乱流構造はDNSで観察される乱流構造と比較し,格子解像度の不足から長さスケールが非物理的に伸長しているが,sub-grid scale(SGS)渦粘性を考慮したスケーリング則を新たに提案することで,壁面モデルLESでは壁面近傍のSGS渦粘性による拡散効果が支配的な要因となって乱流構造が伸長していることを明らかにした.また壁面近傍秩序構造(擬似的なストリーク構造)によって縦渦が生成され,壁面近傍の乱れが自律的に再生維持される壁面モデルLESの乱れ生成メカニズムについても考察を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
剥離・再付着現象は壁面近傍で起こる流体現象であるため,圧力勾配項や対流項などの非平衡効果によって引き起こされる剥離・再付着現象を高精度に予測可能な壁面モデルLESの開発には,壁面近傍における瞬間乱流構造とその乱流生成機構に対する学術歴な理解が不可欠である.その目的のため,壁面モデルLESを用いた平板乱流境界層の解析を実施し,壁面近傍流れ場に対して条件付き平均を行うことで,壁面モデルLESにおいても壁面近傍秩序構造が統計的に存在することを明らかにした.また,乱流構造長さスケールのDNSとの違いや,壁面モデルLESの乱れ維持機構についても考察を行ったことから,順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,初年度に明らかになった壁面モデルLESの乱流構造に関する知見を,剥離・再付着現象を高精度に予測可能な非平衡壁面モデルへと展開していく.具体的は,衝撃波との干渉による急激な逆圧力勾配によって流れが剥離する衝撃波-乱流境界層干渉流れを対象に,壁面モデルLESで非平衡効果を考慮することの有効性の解明や,非平衡壁面モデルのさらなる改良に取り組んでいきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
国際学会で対面発表を行うためのアメリカへの渡航費用として前倒し請求をしたが、健康上の理由によりオンライン発表に切り替えたため。本年度は、国際学会での対面発表を予定しており、そのための旅費として使用する予定である。
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