2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidatig the mechanism and promoting the thermal conduction at mismatched interface
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22K14189
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
許 斌 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (20849533)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミスマッチ界面 / グラフェン / ダイヤモンド / 自己組織化単層膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、デバイスの放熱に重要な役割を持つ放熱複合材料の高熱伝導率化を実現するために、フォノン周波数が大きく異なるフィラーと母材間の界面熱伝導(TBC)を向上させることを目的としている。この目的を達成するには、未だに確立されていないミスマッチ界面での熱伝導のメカニズムを解明することが重要である。また、将来的には、複合材料の大規模生産に向けて、マイクロ粒子にも適用可能な高効率かつスケーラブルな界面修飾技術を開発する必要がある。これら2つの目的を達成するために、本研究の1年目では金属・ダイヤモンドのモデル実験系に異なる界面構造を作成し、界面近傍のフォノン状態を制御することで、TBCの変化を調べました。 具体的には、(1) 自己組織化単相膜(SAM)で修飾した界面と(2) グラフェン挿入した界面でのTBCを時間領域サーマルリフレクタンス法(TDTR)で測定した。その中で、(1) SAM修飾した界面でのTBCは予想外の非単調な傾向を示した。また、同様なSAMで修飾したミスマッチの小さい銅・サファイア、銅・シリコン界面では、TBCが一定であることから、界面でのフォノンミスマッチは、SAM中のフォノン輸送の振る舞いを大きく左右することを示唆されている。また、SAMは長さによって弾性率が異なるため、その界面層の弾性率はフォノンの非弾性散乱に寄与して熱の輸送を決定することが判明した。(2)グラフェンを挿入した場合のTBCについて調査された結果、銅・ダイヤモンド界面において、アルミニウム・サファイア界面で観察されたグラフェンの挿入による界面結合強度の低下およびそれによるTBCの減少は、グラフェンのフォノン架橋効果によって防ぐことが示唆された。これは、本研究で期待されている2次元材料による界面TBCの促進効果の可能性を実証したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の一年目は計画通りで、異なるSAM膜を用いて、ミスマッチが異なる系統でのTBCを調べて、ミスマッチ系統における架橋効果が界面層の構造によって制御することを確認し、非弾性散乱の効果を明らかにした。また、元計画の2年目で行う予定だった2次元材料によるTBCの制御に関する研究は予定より早く開始し、グラフェンによるフォノンミスマッチの架橋効果を確認できた。以上の成果をもって、本研究の一年目は当初の計画以上に進展していると判断する。これらの成果は以下に具体的に記述されている。(1)厚さが異なるSAMで銅・ダイヤモンドの界面を修飾した。SAMが均一に配向性高く成膜することは、エリプソメータ測定とDI水の接触角測定により確認された。TBCを調べた結果、膜厚が増加すると、銅・ダイヤモンド界面のTBCが減少してから増加する傾向を示した。一方、ミスマッチが比較的小さい銅・シリコン、銅・サファイアの界面ではTBCが厚さに依存せず、ほぼ一定であることが明らかになった。これらの結果は、SAMの長さによって弾性率が異なるため、界面のミスマッチ度合いがフォノンの非弾性散乱を引き起こし、界面の機械的な性能がフォノンの輸送を左右することを示唆している。(2)グラフェンを挿入した銅・ダイヤモンド界面における熱伝導をした。グラフェンが修飾されていない場合と比べ、アルミニウム・サファイア界面では、グラフェンの挿入によって界面結合強度が大幅に低下し、TBCも同様に低下した。しかし、銅・ダイヤモンド界面では、グラフェン有り無しにかかわらず、TBCがほぼ一定の値を示した。グラフェンの挿入によって界面結合強度が大幅に低下するにもかかわらず、TBCが低下しないのはグラフェンによって銅・ダイヤモンドのフォノンミスマッチを架橋しっているからと示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の進め方ついては、(1)SAMと(2)二次元を界面層とした場合の熱伝導を継続的に調べる予定である。その計画は下記となる。(1)一年目では、異なる長さのSAMを用いて、界面層の弾性率がフォノンの架橋効果にどのように影響するかを調べた。2年目は理論解析に主眼を置き、まずは分子動力学シミュレーションを用いてSAM膜の弾性率を調査する。ここでは、SAM分子の鎖長だけでなく、SAMの被覆率、配向性、および鎖間相互作用による影響も調べる。また、これらのSAM特性を変化させながら、界面層の弾性率の変化による界面層の振動周波数の変化と界面近傍のフォノン架橋効果を調べる。同様の調査は、フォノンミスマッチの異なる銅・シリコン、銅・サファイア界面にも行う。そして、これらの場合において、TBCと架橋効果の相関性を定量化することによって、ミスマッチ系統におけるフォノン架橋効果の理論を構築する。(2)一年目では、層数の異なるグラフェンを用いて、ミスマッチ系統におけるフォノン架橋効果が大きく寄与することを確認したが、グラフェンのような2次元材料の層間には弱いファンデルワールス力が働くため、界面での結合強度が低下させ、架橋効果によるTBCの促進が打ち消された。界面でのTBCを向上させるためには、界面での架橋効果を維持しながら結合強度を向上させる必要がある。そのため、グラフェンの代わりに、ダングリングボンドが豊富に存在する酸化グラフェンを使用することで、界面での結合を強化する。また、グラフェンにイオンボンバード等の処理を施すことで、ダングリングボンドを形成し、界面での結合を強化することで、TBCを促進することも期待できる。その他、グラフェン以外の2次元材料の挿入によるTBCの変化もグラフェンと同様に調査し、界面TBCを向上できる候補材料を見出す。
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Causes of Carryover |
次年度の使用額が生じた理由は、以下のとおりです。二年目に、サーマルリフレクタンス法のレーザー(輸入品)を購入する予定があり、また海外で開催される国際学会に参加する予定もあります。円安のため、装置の価格と学会参加費が大幅に増加したため、一年目の予算の188,002円を二年目に繰り越し使用することとしました。
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