2023 Fiscal Year Research-status Report
切り紙構造を利用したフレキシブル熱電発電デバイスの開発
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22K14198
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺嶋 真伍 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (10825615)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 熱電発電 / 切り紙 / フレキシブル電子デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
8つある研究項目のうち「アレイ化」について取り組んだ.具体的には,これまでと同様の切り紙パターン(巴パターン)をアレイ状に設計し平面状態・曲げ状態・引張状態における出力を計測した.このときの熱電素子のサイズは,前年度の実験結果を踏まえて4×3×1mmとしており,電極と配線の役割を担う銅層の厚みについても前年度の実験結果を踏まえて40 μmとした.本アレイ状の巴型TEGには12対の熱電素子を実装した. はじめに平面状の熱源に設置した場合の性能を計測した.全体の電気抵抗を計測したところ,360±40 mΩであり,1対の場合が30~40 mΩであったことを考慮すると対数倍の抵抗値であることがわかる.このことは,大面積であるアレイ状の巴パターンを立体化させた場合でも,銅層の破断無く立体化させることに成功したことを示している.また,開放端電圧は,高温熱源温度が100℃の場合において142±2 mVであり,出力は最大で12.4 mWとなった.前年度の実験結果から,1対の巴型TEGにおける開放端電圧が約12mVであることがわかっており,今回は,その対数倍の値を得たため,アレイ状に配置したことによる電圧の低下は見られず,性能を保てることが判明した.続いて,曲面熱源(曲率半径37.5 mmの半円柱)に設置したところ,同等の開放端電圧および出力を得た.また,引張状態における性能を計測するため,アレイ状の巴型TEGを引張歪み40%の状態で平面の高温熱源面に設置した.この結果も同様に,開放端電圧と出力は変化することはなかった.このことは,たとえ熱源面が熱配管のような曲面であっても,人の皮膚のような伸縮する熱源面であっても,性能を低下させることなく一定の性能を発揮できることを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本提案研究の巴型熱電発電デバイス(巴型TEG)を「アレイ化」した結果,大面積であるにも関わらず,アレイ状の巴型TEGを立体化させた場合でも電気抵抗が変化しなかったため,どの箇所においても金属層の破断や熱電素子実装部の剥離が無いことが示された.加えて,アレイ状の巴型TEGの開放端電圧および出力については,1対の場合と同じ温度差が熱電素子内に生じていたことが判明した.さらには,アレイ状の巴型TEGの平面状態・曲げ状態・引張状態における出力を計測した結果,曲げ変形や伸縮変形をさせたとしても平面状態の場合と性能が変わらないことから,アレイ状の巴型TEGに対して,今後,変形耐性を高めるような工夫を施さずとも,本提案の巴型TEGは非常に曲げ耐性と伸縮耐性が高いことが実証された.これらの事実は,すでに本提案の巴型熱電発電デバイスが産業化可能なレベルであることを示していると考えたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究項目「出力の安定性評価」「接触電気抵抗の低減」「熱伝導や熱伝達の解明」をベースに進める. 「出力の安定性評価」については,繰り返し曲げ変形と繰り返し伸縮変形を与えた場合に銅層の破断や熱電素子実装部の剥離が生じるのかを電気抵抗を計測することで検証する. 「接触電気抵抗の低減」については,超音波はんだ(現行の実装方法)・バックメタル層の付与・銀ペーストを実装方法として採用し,各実装手法における接触抵抗を計測する.「熱伝導や熱伝達の解明」については,数値シミュレーションと実験の両方から取り組む.数値シミュレーションにより,これまでの実験結果に対する学術的な理由を把握する.具体的には,巴型TEGを平面状態から徐々に立体化するにつれ巴型TEGの出力が向上した理由,および放熱の役割を担う天板の面積を大きく変化させた場合でも出力にあまり差が生じなかった理由を把握する.このためにはまず,空気領域の対流の有無が熱電素子内部に生じる温度差に影響するか否かを明らかとしたい.その一方で,数値シミュレーションの結果が実現象と一致しているか検証する必要があるが,その際にはIRカメラや局所測温プローブを利用して巴型TEGの各部における温度を計測する.
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Causes of Carryover |
結論から言えば,昨今の「①過大な物価上昇」,「②半導体材料価格の上昇(半導体不足)」,「③異常な円安」による影響を受けたためである.購入予定であった熱電半導体や引っ張り試験装置などの商品を,当初考えていたものより安価なもの,もしくは購入できなかったため次年度使用額が生じた.次年度以降ではさらに,昨今の半導体事業の激化に伴い,半導体に関する商品の更なる値上がりが予想されるため,今年度と同様に,購入対象を安価なものに切り替える,もしくは購入を取り下げるという対策を講じる可能性は高い.本若手研究の申請時(2022年度前)と比べて上記の①~③に関する状況が大幅に変わってしまったため,今後の使用額に関する計画変更は生じてしまうと予想する.
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