Outline of Annual Research Achievements |
設計現場では,複数の固有周波数を同時に,しかも,時には大幅に,特定の周波数帯域(以下,危険周波数帯域)外に移動させたいという要望がある.この課題に対し,最も有効な手法として位相最適化解析を上げることができる.本研究で開発した手法をIEDT変更法と称し,従来の位相最適化解析法と比較し,圧倒的に短い計算時間で,確実に解が得られることを示した.ここで設計対象によっては,位相を変えるのに穴を設けることはできず補強のみで対応することが求められることがある.この場合,もし該当する固有周波数を上げることによって域外に追い出したいとする.歪エネルギー密度値(Ws)が運動エネルギー密度値(Wk)より小さい場合,補強すると,固有周波数は下がってしまい,従来の位相最適化法で該当する固有周波数の目標値をより高いものにすると,収束しないこととなる.従来法では局所最適解に陥るからである.しかし,当初, WkがWsに優っていても,同じ個所の補強をアップさせていくとWsがWkに優るという意味での逆転現象があり,補強により,固有周波数を高くして追い出すことができることを見出した.このことから,IEDT変更法では,一部の固有周波数は補強のみで,残りは穴の設置のみでと,多様な解が得られることを示した.これはまさにインタラクティブに,各固有周波数が上がるか下がるか予測しながら位相を替えて行けることができるからであることを示した.更に危険周波数帯域内の周波数応答積分値の低減に対しても従来の積分値を最小とする最適化法よりもIEDT変更法を利用する方が,積分値低減の課題に対しても優れた結果が得られることを示した.以上の強力な基盤技術を基に,苺輸送箱で,危険周波数帯域外に固有周波数を移動させることのみならず、周波数応答積分値低減においても所期の結果が得られることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した次の(1)~(4)の課題の達成が得られたこと,予定していなかった(5)が得られたことで「②おおむね順調に進展している」とした.(1)苺,卵ともダメージし易い周波数帯域は5~10Hzであることが把握できた.(2)モデルの固有周波数同定に,本手法で使用する歪・運動エネルギー密度分布が有効であることを初めて示した.(3)代表的な空間充填輸送箱の衝撃モデルを開発し,卵の割れの生じない限界高さを示した.(4) (2)の成果を応用し,各コアに苺を入れた輸送箱の共振周波数を危険周波数帯域外に移動させることが得られた.(5)更に,計画時論じていなかったが,あと一つ重要なことは, 危険周波数帯域での周波数応答値の積分値の大きさを最小にすることである.これについて, 本提案の,共振周波数を域外に追い出すIEDT法は従来の最適化手法を用いて,積分値を最小にする手法より優れた手法であることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度で危険周波数帯域外に固有周波数を移動させる基盤技術が得られたが, 最も重要なことは, 危険周波数帯域での応答値の危険周波数帯域での積分値の大きさを最小にすることである.これについては計画時論じていなかったが, 最優先で行う.この技術を用いて輸送箱の応答値の危険周波数帯域での積分値を最小にする設計法を求める. その最適化の際,落下しても傷まないことを拘束条件とする.実用化を考え特許出願も行う.
室内騒音も室内形状が決まると特に下げたい周波数帯域がある.室内騒音の場合,対応する固有周波数が音場と構造の連成で複数の固有周波数を扱うこととなる.室内形状で決まる固有周波数の移動は困難であるが連成に関する固有周波数は移動させることができる.この場合,IEDT法がどこまで有効かの確認を行う.更に、IEDT法を、固有モード制御や強度・剛性問題にも拡張する。IEDT法に拠るシミュレーションで,通気孔を設けた上で強度剛性の条件も満たす最適な苺や卵の輸送箱を求める.
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