2023 Fiscal Year Research-status Report
時々刻々と変化するヒトの身体に適応した運動錯覚制御手法に関する研究
Project/Area Number |
22K14225
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
小村 啓 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (00881096)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 運動錯覚 / 経皮的振動刺激 / ヘッドマウントディスプレイ / EMG |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,経皮的振動刺激で生起する運動錯覚を阻害せずに視覚刺激を重畳する方法の検討,及び運動錯覚の個人差が生起する原因の検討を行った.本年度の実験でも昨年度と同様に刺激対象としたのは右手首の橈側手根屈筋腱であり,この腱に振動刺激を与えると被験者は手首が背屈するような感覚を知覚する.これまでの研究では,この錯覚を阻害せずに視覚刺激を与えることが難しいという課題が存在した.まず一つ目のアプローチとして,運動錯覚が生起している右腕手首の上に液晶ディスプレイを設置し,そのディスプレイで被験者の手首が背屈する映像を運動錯覚に重ねる方法を提案した.しかし,この手法ではあらかじめ準備した手首が背屈する映像を重ねることしかできず,その映像提示方法では運動錯覚を阻害してしまうことが分かった.そこで,2つ目のアプローチとしてヘッドマウントディスプレイを通じてリアルタイムで被験者が感じている運動錯覚をフィードバックする方法を提案した.提案手法は,まず被験者が知覚した右首の錯覚による背屈運動を左手首で再現してもらい,その動きをVive Proのコントローラを通じてトラッキングし,ヘッドマウントディスプレイを通じて右手首の動きとして被験者にフィードバックを行った.その結果,全ての被験者が,閉眼状態での運動錯覚と同程度の錯覚を開眼状態でも経験することができた.一方で,この実験を通じて,被験者間で同じ振動刺激を与えても生起する錯覚量には大きな個人差が存在することも分かってきた.そこで運動錯覚の個人差がどのような要因で生まれるのかの基礎的な検討も行った.まず,振動刺激を与える筋肉の緊張状態が錯覚を阻害してるのではないかと考え,錯覚の大小と筋肉の緊張状態をEMGで計測してみた.しかし,運動錯覚の個人差と筋緊張と間に関連を確認することはできなかった.今後は,この個人差についてさらに調査を行っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた,運動錯覚のモデル化,及び運動錯覚を阻害しない視覚刺激提示法の開発は実現することができた.現在は,上述の開発した装置はさらに発展させ,個人ごとに運動錯覚を精密に制御する方法を検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
被験者間や被験者内において錯覚量が大きくばらつく問題が存在する.今後はこの要因を明らかにするために,超音波エコーを用いた身体形状の計測や,振動刺激を腱に効率的に伝搬する機構の開発などを進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
次年度に取り組まなければならない課題が明らかとなったため,研究期間を延長した.次年度は,運動錯覚の個人差について綿密に調査を行う予定である.これまでの研究では,被験者間の運動錯覚の大きさの違いがどのような要因に由来するのかが明らかにできていなかった.次年度ではこの要因を明らかにするために,被験者の身体的な特徴を,腱モーダル試験や超音波エコーによる筋・腱サイズの計測,刺激中の筋緊張度の計測等を通じて定量化を行い,運動錯覚の個人差に関連する要因分析を行う予定である.最終的に,これらの要因に基づき,それぞれの被験者に合った刺激方法を明らかにする予定である.
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