2022 Fiscal Year Research-status Report
深層学習を活用したボルツマン方程式のグリッドレス直接数値解法の開発
Project/Area Number |
22K14245
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
川口 悟 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (70834852)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 機械学習 / PINN / 電子速度分布関数 / 気体放電プラズマ / 放電基礎過程 / 電子輸送係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
RF電界下における時間依存の電子速度分布関数(EVDF: Electron Velocity Distribution Function)を,Physics-Informed Neural Network (PINN)を活用したボルツマン方程式(BE: Boltzmann Equation)の直接数値解析によって正確に求める方法を開発した.ここでは,EVDFをフィードフォワードニューラルネットワークによって近似し,BEを満たすように学習を行い,(1), (2)の知見を得た. (1) PINNによって,EVDFが初期分布から周期的に定常な分布に達するまでの過程を求めることができた.また,ニューラルネットワークの学習に使用する座標点の設定方法が学習の成否に大きく影響を与えることがわかった.単にランダムに座標点を与えるのではなく,Evolutionary sampling法などを用い,BEの残差の絶対値が高い地点に座標点を多く与えることが有効であることが分かった. (2) EVDFを表現するニューラルネットワークに予め周期性を持たせることにより,多数のRFサイクルを解くことなく,与えられたRF電界下におけるEVDFの周期的定常解を得ることができることが分かった. また,BEを速度空間で積分すると,電子数密度連続の式が得られる.電子数密度の時空間進展の実験値と矛盾しないように連続の式をPINNを活用して解く方法を開発し,これによって電子輸送係数を決定する新たな方法を提案した.これにより,換算電界が29.7 Td - 1351.6 Td (1 Td = 10^(-21) Vm^2)の範囲におけるArガス中の電子ドリフト速度,電離衝突レート係数,電離係数,縦方向拡散係数,高次の係数等を決定することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度実施予定だった,PINNを活用してRF電界下におけるEVDFが初期分布から周期的定常な分布に緩和するまでの計算に取り組んでおり,研究実施計画を前倒している.また,BEから得られる有用な微分方程式である電子数連続の式の解析へと研究を拡張し,電子輸送係数を決定する新たな方法を提案した.したがって,当初の計画以上に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した手法を時間依存および空間依存のEVDF計算に拡張する予定である.これにより,直流電界 + 直流磁界下 ならびに 交流電界 + 直流電界下における時間依存および空間依存のEVDFを正確に計算する方法を確立する.PINNによる電子数連続の式の解析においては,PINNにベイズ推論を組み合わせたBPINN (Bayesian Physics-Informed Neural Networks)を活用して,得られる解および電子輸送係数の不確かさの定量化に取り組む予定である.
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