2023 Fiscal Year Research-status Report
固体量子コンピュータデバイスSi:Pのパルス法磁気共鳴によるスピン制御
Project/Area Number |
22K14269
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
石川 裕也 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 講師 (80825282)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Pulsed-ESR / NMR / Micro Resonator / ESR / Quantum computing |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は固体量子コンピュータ(QC)デバイス候補である希薄リンドープシリコン半導体(SI:P)のパルス電子スピン共鳴(ESR)及び核磁気共鳴(NMR)によるスピン制御を目指し、極小共振器(micro-resonatro:μR)の開発を行っている。量子ビットとして扱う31P核のスピンダイナミクスを明らかにするため、超低温・高磁場領域においてパルス法を用いたESR及びNMRの二重磁気共鳴を行うことを目的としている。 当該年度は、開発したμRを希釈冷凍機へ導入し、パルスESRを実施する計画であった。μRを導入するため、希釈冷凍機に構築されていたホモダインシステムの取り外しを実施した。共同研究先であるフィンランドTurku大グループより高感度測定が可能なヘテロダインシステムを提供頂いた。デバイスの改造及び実験打ち合わせのため9月に1ヶ月ほどTurku大に滞在し、実験計画及びμRの開発について議論を行なっている。また、Turku大の希釈冷凍機よりも福井大側のものが設置空間が狭小なため、各デバイスの小型化と機能評価をフィンランド及び日本で実施し、現在希釈冷凍機へ設置する作業を進めている。 並行してμRの開発も継続しており、X-band帯で使用可能なLoop-gap型及びPar-Par(蝶ネクタイ)型形状の2種類を電磁場解析ソフトCOMSOLを用いて設計検討を行い試作した。Millimeter Vector Network Analyzerを用いてμRの共振特性評価を実施している。しかし、Network Analyzerの発振が経年劣化により不安定であり、定量的な評価実施及び研究遂行の妨げとなっている。 並行して開発する円筒型形状の共振器開発では、ESRとNMRを組み合わせた1H-ENDOR測定により二重磁気共鳴が可能であることを確認したが、パルス化による評価には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
電磁場解析ソフトCOMSOLによるμRの特性評価により、X-band帯でのLoop-gap型及びPar-Par(蝶ネクタイ)型の特性把握は概ね順調に進んでいる。実機評価として上述のMillimeter Vector Network Analyzerを用いているが、経年劣化により発振が極度に不安定な状況となっている。発振周波数がLockしないなどの不具合が起きているが、修繕する予算もないため対処療法的な対応により本研究を遂行している。 また、希釈冷凍機に当初搭載する予定が無かったヘテロダインシステムの移設作業に想定以上の時間が掛かっている。移設元のTurku大の希釈冷凍機内部の設置空間に比べ、福井大側では約半分程度の設置空間のため、ヘテロダインを構成するアイソレーターやミキサー等の再構成と追加工が必要となった。現在は設置作業を進めているが、昨年度の遅れも吸収できていないため遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
6月頃にTurku大の共同研究者が福井大に来学し、ヘテロダインシステムの評価等を実施する予定である。また、構築するヘテロダインシステムはD-band帯のため、別途X-band用極低温プローブを製作し、μRの低温における特性評価を実施する。 また、現在別予算にて購入予定のActive Multiplier Chain(AMC)光源を用いて、InSbホットエレクトロンディテクタにて共振特性を評価する手法に切り替えて進める予定である。X-bandでの上記評価終了次第、D-band帯での試作評価に移行し、31P核のパルスESR実施をする。 別途予算にて購入予定のRFアンプを用いることにより、スピン制御に向けてストリップラインによるNMRも並行して実施する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画では、当該年度中にパルスESRを実施する予定であったが、検波システムの再構築により実験継続が困難であった。ヘテロダインシステム再構築後であるR6年度に寒剤を多く使う必要があるため、繰越をしている。
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