2022 Fiscal Year Research-status Report
傾斜利用ブリルアン光相関領域リフレクトメトリの機能進化
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22K14272
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
李 ひよん 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (30870787)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 光ファイバセンサ / ブリルアン散乱 / 分布計測システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、光ファイバ中で生じるブリルアン散乱に基づく分布センシング技術「傾斜利用ブリルアン光相関領域反射計(傾斜利用BOCDR)」の性能向上および実用化に取り組んでいる。本年度は、(1) 光損失の影響を受けない歪・温度分布測定の実証、(2) 遠方測定のための差分スペクトル法の提案、(3) 動作速度と測定精度のトレードオフ関係の解明を中心に研究を行った。以下、各成果について詳しく記述する。 (1) 傾斜利用BOCDRは特定周波数のパワーのみに基づき測定を行うため、測定ファイバ中に光損失が生じた場合、歪や温度の測定に大きな影響を受ける。そこで、散乱スペクトルの両傾斜部分で同じパワーを有する2周波数におけるパワーの差分を用いる新方式「両側傾斜利用BOCDR」を提案した。実験の結果、光損失の影響を抑制するという基本動作を実証した。(2) 傾斜利用BOCDRでは、測定レンジの空間分解能に対する比は一定であることが知られている。また、測定ファイバ中には相関ピークが1つだけ存在するように測定ファイバ長を制限する必要があり、測定レンジが制約されていた。そこで、測定ファイバに複数の相関ピークを生成させ、測定点以外からの相関ピークにおける散乱の影響を信号処理によって除去する「差分スペクトル法」を提案した。そして、空間分解能を保ったまま理論的な測定レンジを超えた位置での歪分布測定が可能であることを実証した。(3) 傾斜利用BOCDRにおける動作速度(繰り返しレート=歪分布を取得する速度)と歪測定精度のトレードオフを実験的に解明した。今回用いた実験条件下では、10 ms程度の繰り返し時間が歪を正しく検出できる限界であることを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、散乱スペクトル内の複数の周波数におけるパワーの差分を用いることで、従来は困難であった光損失の影響を抑制した歪分布測定を実証することができた。また、差分スペクトル法を提案し、独自の信号処理を施すことで、空間分解能を保ったまま遠方での歪分布測定を可能とする低コストかつ簡便な手法の実証にも成功した。他にも、傾斜利用BOCDRにおける動作速度と歪測定精度のトレードオフ関係を実験的に解明することができた。これらの成果は、査読付学術論文への掲載や多くの国内外会議で発表に繋がっており、当初の計画通りの順調な進捗が得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、「両側傾斜利用BOCDR」の性能向上を中心に研究を進める予定である。具体的には、(1)歪ダイナミックレンジの上限の解明とその撤廃法の模索、(2) 歪計測性能の定量評価、(3) 最適な2周波数の選択指針の提示、(4) 3周波数以上の利用の検討、(5) 参照光路内の遅延ファイバの最適な長さの解明、を考えている。以下、詳細について記述する。 (1) 本年度は両傾斜利用BOCDRの基本動作は確認したが、今後はその詳細について実験と理論両方から調査していく必要がある。これまでの簡単なシミュレーションでは、測定ファイバ全長から戻る散乱スペクトルに対する典型値を採用していたが、光周波数を変調するBOCDRでは大幅に広がることがわかっている。また、BOCDRでは、散乱スペクトルにおける特有のノイズフロアを考慮する必要がある。(2) 以上を考慮した厳密な散乱スペクトルを用いた分布シミュレーションに基づき、システム性能(歪ダイナミックレンジや空間分解法など)の定量評価を行い、実験的に検証を行う。(3)(4) 併せて、より最適な観測周波数の組み合わせを模索するとともに、本システムの性能を根本的に改善するための方策として、3周波数以上の利用可能性を検討する。そして、その結果を実験的に通じて実証したい。(5) さらに、傾斜利用BOCDRでは、相関ピークの次数の制御のため、参照光路に遅延ファイバが含まれている。その長さは、長すぎても短すぎても、空間分解能や安定性の面から不都合が生じることがわかっているが、最適値は未解明であった。そこで、種々の長さの遅延ファイバを用いてシステムの性能を評価し、シミュレーションも通じて、理論的・実験的に最適値を模索する。
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Research Products
(63 results)