2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14312
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
橋本 永手 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (50909877)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電気化学測定 / BioFilm / 鋼材腐食 / マクロセル電流 |
Outline of Annual Research Achievements |
海水中の鋼材の腐食は,腐食速度が速く,性能低下が生じやすいことから,電気防食等の防食技術を適用することを原則としている。近年建設が進められている洋上風力発電等は予定供用機間が短いため,無防食で対応することで大幅なコストダウンが見込めるが,現状は防食工法を適用せざるを得ない状況である。無防食対応を維持管理の選択肢とするためには,海水中鋼材の腐食速度を予測することは極めて重要である。 しかし一方で,現状の技術で未だ困難なのは,自然海水中鋼材の腐食速度の予測である。自然海水中の鋼材の腐食速度は,人工的に試薬調合された海水中の鋼材の腐食速度よりも速く,その決定的な原因は不明とされてきた。本課題に対する仮説はいくつかあるが,中でも,海洋生息する細菌の影響を考慮することが,最近の世界的なトレンドのひとつである 本研究課題は,自然環境で鋼材表面での生成が確認されているが,実際の鋼材の腐食速度への影響が不明確な「Biofilm」に関して,Biofilmが鉄に与える化学的な作用を明らかとするものである。鋼材の腐食現象は酸化還元反応であることから,鋼材表面で電子の授受が生じ,腐食と同時に電流を発する.この電流はマクロセル電流と呼ばれ,腐食速度と相関があることが知られている.したがって,BioFilmが腐食に与える影響を精緻に解析しようとする場合,BioFilmが生成した鋼材のマクロセル電流をい測定する方策となる.本年度は,BioFilmが生成した鋼材が生じるマクロセル電流とマクロセル電流の起電圧を測定するための計測原理を構築し,BioFilmの腐食特性を電気化学的に測定するための基礎理論を構築した.また,構築された理論に基づくマクロセル再現装置を製作した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題によって,BioFilmの電気化学的測定理論が整理され,そのための実験装置を製作した.これらは本課題の測定の根幹をなすものであり,その理論および測定環境を構築できたことは研究進捗としては大きな進展である.これらのBioFilmを電気化学的に評価するための測定原理と具体的な測定結果は国際ジャーナルCorrosionScienceに、2年度目早々には投稿予定であることから、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度製作した装置を用い,BioFilmの電気化学的特性を測定する予定である.また,本測定装置はBioFilmに限らず,あらゆる局所腐食に対する電気化学的特性を取得できることから,局所腐食の要因を横並びで評価することが可能である.したがって,他の要因と比較した場合のBioFilmの腐食特性の大小を評価可能である.これらの成果は国際ジャーナルCorrosionScienceに投稿予定である.具体的には,BioFilm,錆層還元,酸素濃淡電池で生じるマクロセル電流を,本測定装置を用いてそれぞれ測定し,それぞれの要因が腐食に及ぼす影響を横並びで評価する.これらは申請者が過年度構築した測定装置が評価可能なものであり,腐食化学において重要な実験結果となると思われる.
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