2022 Fiscal Year Research-status Report
左折車の法令遵守率向上と円滑性の両立に寄与する信号交差点制御手法に関する研究
Project/Area Number |
22K14335
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
張 馨 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (60825115)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 交差点 / 遵守率 / 信号制御 / 幾何構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の道路交通法では、車両は横断歩道を通行する際、接近する歩行者に進路を譲ることが定められている。しかしながら、車両が歩行者の前を通過する場面も多々存在する。一方海外では、二段階横断方式などを導入することで一回の横断距離を短くし、左折車による遵守率向上と円滑性の損失を小さくする事例もある。このように、法令遵守率は、単にマナーの問題だけにとどまらないと考えられる。そこで本研究では、歩行者交通量、横断歩道の幾何構造、信号現示を考慮した車両の歩行者に対する譲り挙動特性を明らかにした。6つの横断歩道の観測データを用いて、左折車が歩行者優先ルールへの遵守状況を分析し、歩行者交通量、信号現示、横断歩道の幾何構造、との関係を把握したうえで、左折車両の譲り挙動モデルを構築した。その結果、横断歩行者数と横断歩道長は左折車両の譲り率に正の影響を与え、歩行者青時間の経過時間は負の影響を与えることが示された。長い横断歩道においては、法令遵守率が上がると左折車両が通過できる台数が激減する可能性が高い。また、歩行者青時間の終盤に左折車両と横断歩行者の両者が早く通過・横断し終えたいため、交錯の危険性も高くなる。以上により、現在の左折車両の法令遵守状況と信号交差点を計画段階に想定している状況は必ずしも一致していないことが明らかになった。今後本年度に構築した左折車両の譲り挙動モデルが左折車両の円滑性と歩行者の安全性の評価や信号交差点の設計および信号制御の設定の検討には不可欠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実施計画は左折車が歩行者優先ルールへの遵守状況を分析し、信号現示、横断歩道の幾何構造および歩行者交通量との関係を把握し、その遵守挙動を再現可能な車両譲り挙動モデルを構築することである。データ分析およびモデルの構築は計画通りに進んでおり、その研究成果を国内学会と海外学会へ投稿した。さらに、今後学会で得られたコメントが反映された内容で、ジャーナルに投稿する予定である。そのため、本年度の研究は順調に予定通り進めていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築した左折車両の譲り挙動モデルに基づくモンテカルロシミュレーションを実施し、遵守状況に応じて左折車線の交通容量の相違点を明らかにし、その変化に対応できる現行の交通容量推定手法の改善を提案する。また、ケーススタディを通じて、交差点の幾何構造や信号現示が遵守状況と左折車線の交通容量に与える影響を明らかにする。さらに、自動運転車の様々な設定概念に合わせて、歩行者の安全性と自動車の円滑性の双方を考慮して二段階横断方式も含めた合理的な横断歩道の構造や信号制御方式の選定方法を提示し、全体を取りまとめる。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた現地調査に使用する車両レンタル料および高所ビデオ撮影装置のレンタル料に残額が生じることとなった。これについては、次年度の直接経費に組み込んで外国旅費および論文投稿料を計上することを計画している。
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Research Products
(1 results)