2023 Fiscal Year Research-status Report
世論状況を考慮した土木・交通分野の「働きがい」の形成要因
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22K14336
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 皓介 京都大学, 工学研究科, 助教 (30793963)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | well-being / happiness / meaningful work / constrauction worker / noblesse oblige |
Outline of Annual Research Achievements |
土木・交通分野は公共的役割を担う仕事であるが,教育や医療などの他の公共部門と比べても,2000年代をピークとする土木バッシングなど,世論や政治の影響を強く受けてきた分野である.一方で,人工知能等の発展により各種の仕事の代替可能性が取りざたされる中で,個人の労働の意味もまた問われている.こうした状況の中で「土木・交通の仕事はいかにしてMeaningful workとしての実感を得られるか」を,世論認知状況等も考慮の上で,理論的,実証的に明らかにすることを本研究の目的とする. 1年目に実施した,土木・交通ではたらく人の意識構造を明らかにすることを目的としたWebアンケート調査の分析結果を,国内外の学会等で発表し,その分析方法や着眼点の妥当性について,様々な専門家と議論を行った. その中で,給与や休暇などの基本的な労働環境の重要性についての配慮の必要性や,様々な幸福論等との関連からの展開可能性が指摘され,さらなる分析への足がかりを得ることができ,それらを踏まえて3年目の令和6年度にさらなる調査を実施予定である. また,1年目の調査で着目したのは現場の労働者であったが,より抽象的な労働になり直接的な意義の認識が難しくなることが想定される高学歴層の仕事意識についての分析もおこなった.高い能力を持ち高度な教育を受けた者には,奉仕の精神が求められることもあり(いわゆるノブレス・オブリージュ),そうした精神は,土木や交通などの公共性の高い仕事との強い関連が想定される.そのような着眼点から,高学歴者のエリート意識についてのWebアンケート調査により,いわゆる高学歴と呼ばれる人の働く意識の分析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,2年目までに,土木・交通で働く人の意識構造について仮説を立て,それを実証するためのアンケート調査を実施することを予定していた.当初予定していた通り,2年目までに,土木・交通の労働者に対する基礎的な調査だけにとどまらず,新たな着想を得て,高学歴者に対する仕事における公共的な精神についてのアンケート調査も実施することができた.これらの調査結果を学会等で発表し,議論することまではできているが,査読付き学術論文の出版にまでは至っていないため,当初の計画以上に進んでいる,と言えるほどではないが,想定していた程度には研究は進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
得られた結果を査読付き学術論文として投稿し,より精緻化された知見として社会と共有していく.その際に,単なる現状分析にとどまらず,仕事の意味感を回復していくための処方箋的な知見を提示,ないしは実践的な取り組みにつながるような知見を提示できるよう分析を進めていく.そのようにこれまでの知見をとりまとめることに加え,より実践的で処方的な知見が得られるよう,さらなる追加の調査についても検討していく. 特に,この1-2年で進展が著しく人々の今後の仕事にも影響が想定される生成AIをはじめとする科学技術の発展や,長年の低インフレ時代から賃上げが広がりつつある労働環境の変化,2024問題をはじめとする規制の状況など,土木・交通で働く人々を巡る状況は劇的に変化してきている.そうした社会状況も踏まえながら,本研究課題の目的としていた「土木・交通の仕事はいかにして意義ある仕事としての実感を得られるか」という問いに対し,この研究形の解答を提示できるよう,とりまとめを行っていく.
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