2023 Fiscal Year Research-status Report
変化を許容した重要文化的景観の価値評価の手法および保存活用計画への適用方策の提案
Project/Area Number |
22K14340
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石橋 知也 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (60435112)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 重要文化的景観 / 調査報告書 / 保存活用計画書 / 文化的景観保護制度 / 本質的価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
文化的景観の保護制度開始より15年が経過し、全選定事例を俯瞰した調査・分析の必要性が指摘されている。本研究課題では、変化を許容した重要文化的景観の価値評価の手法およびその価値の保存活用計画への適用方策を提案する。 このため、1)2021年現在、重要文化的景観に選定されている全70事例の調査報告・保存活用計画等から把握される傾向は何か?、2)全事例のうち選定基準6(鉱山・採石場・工場群などの採掘・製造に関する景観地)を含む9事例の特徴とは何か?、3)現在調査中の「長崎県波佐見町の窯業および農業の集落景観」における保存活用計画の検討内容および要点とは何か?、の3点を明らかにすることが本研究の目的(課題)であると設定した。 これらの3つの課題のうち「1)重要文化的景観に選定されている全70事例を対象とした調査報告および保存活用計画の傾向把握」について、令和4年度から調査開始し令和5年度までで、重要文化的景観の選定に必要とされる調査報告書ならびに保存活用計画書の収集を完了した。収集した資料の分析を概ね終え、「本質的価値に関わる記述」を抽出し、全体的な傾向の把握をおこなった。また、2つ目の課題である「2)重要文化的景観選定基準6(鉱山・採石場・工場群などの採掘・製造に関する景観地)を含む事例の詳細調査に基づく特徴の分析」については、令和5年度において現地視察と自治体の担当者へのヒアリングをおこなった。その結果、該当事例の本質的価値の特徴および保護規制の実態を明らかにした。これらの成果は、土木学会にて公表済みである。さらに、「3)「長崎県波佐見町の窯業および農業の集落景観」の保存活用計画策定を対象とした実証的研究」については、令和5年度も波佐見町との連携を継続しており、各種研究に必要な資料収集をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3つの課題のうち「1)重要文化的景観に選定されている全70事例を対象とした調査報告および保存活用計画の傾向把握」、「2)重要文化的景観選定基準6(鉱山・採石場・工場群などの採掘・製造に関する景観地)を含む事例の詳細調査に基づく特徴の分析」については、順調に進んでいる。一方で、「3)「長崎県波佐見町の窯業および農業の集落景観」の保存活用計画策定を対象とした実証的研究」については、長崎県波佐見町の実際の重要文化的景観の選定に向けた事業の進捗に影響を受けるところが大きい。その意味で、当初波佐見町が描いていた事業の予定よりも約1年の遅れが生じているため、事業のプロセスを分析することを前提とした研究であることを踏まえると現時点では「やや遅れている」と評価せざるを得ない。いずれにしても、令和元年から継続されている上記事業の各種資料を収集し整理する作業は実行できるので、可能なところから着手している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
「3)「長崎県波佐見町の窯業および農業の集落景観」の保存活用計画策定を対象とした実証的研究」については、前述の進捗状況でも述べたように、長崎県波佐見町において令和元年から継続されている重要文化的景観選定にむけた事業の各種資料を収集し整理する作業は実行できるので、可能なところから着手していく必要がある。また、3年間の研究のとりまとめも同時並行的に検討する必要がある。上記状況に照らしながら、当初の3年間の研究計画を見直し、4年目の研究が必要かどうかも見極めながら推進する予定である。
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Causes of Carryover |
2つ目の課題である「重要文化的景観選定基準6(鉱山・採石場・工場群などの採掘・製造に関する景観地)を含む事例の詳細調査に基づく特徴の分析」について、一部現地調査の代わりにオンラインによるヒアリング調査を含めたため、当初予定していた想定の旅費がかからなかったこと、想定していた備品購入が一部不要となったこと、などが次年度使用額が生じた理由である。次年度は、資料収集やとりまとめ作業に実質的な人手がかかるため、当初の人件費を増額して、前年度の旅費や備品から充当することを計画している。
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