2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of complex network theory for robust transportation netowrks against partial disruption
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22K14341
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
安藤 宏恵 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 助教 (00880056)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 道路網 / 道路網接続構造 / 敵対的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,災害時に救援物資の輸送や円滑な避難のために重要な役割を担う交通ネットワークに対し,少数の部分的な損傷が生じても機能不全に陥らない交通ネットワークの構造的特徴を示すことを目的にしている.2年目では,1年目において構築した一般的道路網生成モデルを拡張し,深層生成モデルの一つである敵対的生成ネットワークのアルゴリズムを用いて,次数分布や次数相関がより実道路網の特徴に近い一般的道路網の生成をおこなった.インプットデータは九州地方全域の道路網として,道路密度等からクラスタリングを行い,構造が類似した道路網に分類したうえで学習させることで,それぞれの特性を持つ道路網を生成した.本手法では,道路種別によらず全ての道路を対象として生成が可能であり,対象道路の限定や道路網の縮約を必要としない点も利点といえる.接続構造指標によって分類した道路網は九州内の都市部を抽出しており(人口規模と相関しており),道路網の整備と都市形態に関係性があることが示された.本手法を用いて,部分的欠損に対する道路網の強化が元の特性によってどのように異なるのか,検証する予定である. また,形状論アプローチである固有ベクトル中心性による接続性評価指標をもとに,道路網のリンクの損傷または部分的なエリアの損傷がもたらす影響の大きさについて実道路網を用いて分析した.損傷前の道路網において接続性が強い場所,交通容量の大きな道路が交差する場所,高速道路沿いにおいて損傷した際の影響が大きいことがわかった.さらに,それらの損傷によって影響を受けやすい場所(脆弱な場所)を特定した結果,完全に山間部ではなくいわゆる中山間エリアが最も損傷の影響を受けやすいことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の2年目である2023年は,1年目に整理した基礎的な接続性指標や評価方法を用いて,実際の道路網に基づく分析を進めた.当初は交通ネットワークのみを対象としていたが,複雑ネットワークの展開として異なるインフラである電力ネットワークと交通ネットワークの相互依存性を考慮した災害時交通の役割について分析している.また,道路ネットワークだけではなく,公共交通を含めた複数の交通モードの包括的ネットワークの解析についても,現在テストネットワークを用いたモデル化を進めており,2年目の成果としてはおおむね順調に進展しているといえる. 1年目に構築した一般的道路網生成手法についてまとめた論文は,土木学会論文集D3に採択済みである.リンクやエリアの部分的損傷が与える影響と影響を受けやすい場所の特定についてはThe 15th International Conference of Eastern Asia Society for Transportation Studies において成果発表をおこなった.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目では複数交通モードの包括的ネットワークにおける部分的欠損に対する評価について,実際の都市における適用を見据えている.包括的ネットワークの分析では,複雑ネットワーク理論の応用範囲を明確に示すため,従来手法との比較も行う.これらについては海外研究者との議論も予定しており,国際的な研究活動も随時進めていく予定である. さらに電力ネットワークと交通ネットワークの相互依存性に関する分析では,通学用バスやコミュニティバスとして自治体による導入が進んでいるEVバスについて,災害時の交通機能としての役割に関して,部分的な損傷を補う可能性についても検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外研究者との意見交換について,双方の予定の都合から,2023年度から2024年度に変更となったため,当該助成金が生じた.次年度である2024年度の意見交換および助言をいただく機会については,既に調整済みであるため,翌年度分の助成金と合わせて,国際的な研究活動のために使用する予定である.
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