2022 Fiscal Year Research-status Report
道路交通由来有害物質のキノン体生成に伴う魚類毒性の変化
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22K14355
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
日置 恭史郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (10792913)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 路面排水 / タイヤ / サケ / 毒性 / 道路塵埃 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2022年度は、タイヤの添加剤である6PPDが環境中で酸化されて生成する6PPD-Q(6PPDキノン)がサケ科魚類に及ぼす急性毒性影響を評価した。具体的には、国産のサケ科魚類であるニッコウイワナ(Salvelinus leucomaenis pluvius)、オショロコマ(S. curilus)、ヤマメ(Oncorhynchus masou masou)と毒性試験によく使用されるニジマス(O. mykiss)の計4種を対象に、6PPD-Qの急性毒性試験を実施した。 その結果、ニッコウイワナやニジマスに対する6PPD-Qの24時間LC50(半数致死濃度)はともに2 μg/L未満であり、降雨時の河川から検出される濃度で致死影響が生じ得ることが明らかとなった。一方、オショロコマとイワナに対しては河川で生じる濃度で致死影響は見られなかった。さらに、ニジマス以外の種について脳とエラの6PPD-Q濃度を測定したところ、ニッコウイワナの組織中濃度は曝露濃度依存的に増加し、ILC50(半致死体内濃度)は4.0 μg/kg-wet(脳)と6.2 μg/kg-wet(エラ)と求められた。感受性の低い他の2種は有意な急性影響を示さなかったにもかかわらず、組織中濃度が上記ILC50 を上回っていた。同様の傾向は6PPD-Qの水酸化代謝物についても確認された。この結果から、6PPD-Qの感受性の種間差は脳やエラへの蓄積量には起因しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り国内のサケ科魚類に対する6PPD-Qの初期的な有害性評価を実施することができ、今後の毒性メカニズム探求の基礎となる成果が得られ、さらに研究成果を査読付き論文として公表できたため、順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかになった6PPD-Qの急性毒性における種間差の大きさの原因を、今後は追求する。具体的には、高感受性のニッコウイワナやニジマスを用いて、生化学・分子生物学的な手法を駆使して6PPD-Qの毒性メカニズムを解明する予定である。
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Causes of Carryover |
端数の2.6万円程度が残ったため来年度に使用する。
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