2023 Fiscal Year Research-status Report
非都市域における都市的地域の空間構造およびネットワーク構造に関する研究
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22K14382
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小南 弘季 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (90881582)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | まち / 低密度 / 空地 / 外構 / 庭 / 風景 / 居住 / デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
目標とする50のまちのうち37のまちでの調査を行った。それらを通じて、今後研究を進めて行くべき方針と論点をいくつか発見することができた。 低密度なまちの多くは普遍的かつ個性的な形態と歴史を有する空地を有している。また、これらのまちは自然環境に隣接しているため、しばしば空地や街路には植物や動物、あるいは砂や雪、風が入り込む。それらに対する境界装置のありよう、つまりは余白の空間に対する建築的ふるまいにも、まちの個性があらわれる。まちの余白を通してみる境界の立ち現れ方が、周囲の地形を背景にさまざまな風景として表出する。それらの風景は、以下の大きく3つの性質をもって、その潜在的な価値を読み取ることができそうである。 1つ目は「身体性」である。これは低密度なまちの風景が誰もが想像できる1枚の絵葉書のようなはっきりとしたイメージではなく、観察者の動作や五感、つまりは身体感覚に依存して認識されるものであることを示している。それらの風景は刹那的であり、断片的である。例えば、坂道を下りながら望む遠方の風景や振り向くと同時に目の前に広がる風景、強風に吹かれながら目を細めて見る風景などがそれである。 次に「寓喩性」であるが、これは、これらのまちがその余白の大きさゆえにあらゆる物を並置/放置することができること、そしてその結果、それらの風景がさまざまな時代や集団、事件に関する記憶を同時多発的に喚び起こさせることを示す。 最後に3つ目の「参与可能性」は、住民であれば誰しもがまちの風景の形成と維持に関わることができることを示している。一次産業による継続的な環境改造から、庭づくりのような小さいが連鎖を生みだす活動、あるいは上述のような物の放置まで、環境へのあらゆる参与が可能であり、自立共生の基盤となる。 これらは余白と境界に拠る性質であり、都市においては難しく、低密度なまちにおいて可能な性質であるといえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドの調査は順調に進んでいるが、その一方でアウトプットが追いついていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の重要性をアピールする有効な方法を考えつつ、調査結果をまとめていくことを進めていく。現在までの個別具体的な調査結果を全体的に捉えるための統計的なデータ整理が必要であり、今年度の重要な作業として位置づけられる。
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Causes of Carryover |
特に大きな理由はありません。想定内のずれと考えられます。
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