2022 Fiscal Year Research-status Report
土砂災害危険度と生活環境評価に基づく効果的な減災対策メニュー作成とその実現性評価
Project/Area Number |
22K14389
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田村 将太 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (50911509)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 土地利用 / 土砂災害 / コンパクトシティ / 防災・減災 / 人口減少 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、土砂災害リスク低減と生活環境向上の両視点に基づく適材適所の減災対策を検討すること、またそれら対策の費用便益評価から財政的な実現可能性を明らかにすることを目的としている。2022年度は主に以下の2つを実施した。 ①数値標高モデルを用いた土石流氾濫エリアの推定 過去の土砂災害の多くは、土砂災害警戒区域内で発生しているものの、近年ではその外側でも多くの被害が確認されている。そこで、DEM(Digital Elevation Model)を活用し、土石流氾濫シミュレーションにより、土石流氾濫エリアを推定し、近年発生した土砂災害の土石流氾濫エリアと比較した。具体的には、土砂流氾濫シミュレーションFlow-RにDEMを入力し、各種パラメータ(下限到達角、勾配、土砂流動等)を調整することで、対象とした広島市山間部における平成30年7月豪雨時の土石流氾濫エリアの再現を試みた。その結果、一部のエリアで過抽出(非堆積エリアを堆積エリアとして抽出)がみられたものの、平成30年7月豪雨の土石流堆積エリアの約80%をシミュレーションにより抽出できた。 ②土砂災害警戒区域の居住誘導ポテンシャル把握 土砂災害の軽減・防止策の1つとして、市街化区域の土砂災害危険エリアを市街化調整区域に編入すること(逆線引き:将来的な市街地縮退)が考えられる。そこで、広島市市街化区域の土砂災害警戒区域に立地する建物を対象に、2040年までに耐用年数を超える住宅棟数を把握し、新築・建物更新規制によって将来的に誘導可能な建物がどの程度存在するか(居住誘導ポテンシャル)を把握した。その結果、土砂災害警戒区域に立地する建物の70%以上が2040年までに耐用年数を超過することが明らかとなった。そのため、将来的な居住規制による土砂災害リスク軽減ポテンシャルは一定程度高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施した土石流シミュレーションでは、一部、過抽出(非堆積範囲を堆積範囲として抽出)がみられたため、今後、土石流氾濫域推定の更なる精度向上が課題であるものの、当初、本年度に予定していた、シミュレーションによる土石流氾濫域の推定により一定程度高い精度で土砂災害危険エリアを把握することができた。また、次年度に予定していた土砂災害危険エリアの生活環境評価の一部として、土砂災害警戒区域に立地する建物の将来的な居住誘導ポテンシャルの把握も実施できたことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度使用した土石流シミュレーションFlow-R以外の土石流シミュレーションも用いて、土石流氾濫域の推定を行うことで、氾濫域の更なる精度向上だけでなく、土砂の堆積量なども推定し、土砂災害リスクを評価する。また、土砂災害危険エリアに立地する建物を対象に、都市構造の評価のハンドブックで示されている指標(生活利便性や都市施設コスト等)を用いて評価することで、生活環境評価の視点から災害危険エリアの特性を明らかにする。加えて、土砂災害リスク低減策(土砂災害リスクの高いエリアからの居住誘導等)を実施した際の効果についても明らかにする。
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Research Products
(10 results)