2023 Fiscal Year Research-status Report
遊休空間活用型都市農園による社会的効果への体系的理解と評価指標構築の国際比較研究
Project/Area Number |
22K14390
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
蕭 耕偉郎 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (30796173)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 近隣効果 / 自己評価 / ソーシャルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
遊休空間活用型都市農園をはじめとする様々なコミュニティの特徴による社会的効果を体系的に理解し、個々の近隣住民による自己評価にまず着目して今年度の研究を進めた。今年は、多様な社会経済指標を提案し、二項ロジットモデルに基づく評価枠組みに組み込むこととした。各変数の重要性を明らかにし、それが自己評価に及ぼす影響を測定することにより、近隣の状況を分析するために、大阪市内の近隣特性として成長/衰退を含む異なる局面のコミュニティを対象にデータを収集した。520票の自己評価アンケートに基づいた分析結果では異なる近隣住民間の社会的レベルと移動性の自己評価における明らかな格差を浮き彫りにし、これらの評価にプラスの影響を与える成長する地域における近隣特徴との相関性についてもさらに検討を重ねた。その結果ではまず、収入の面でより望ましい状況にある人は、近隣地域や生活環境から恩恵をより受けやすい結果にあり、その結果、自分の社会的地位や、コミュニティの中でのソーシャルネットワークの広がりに対するより肯定的な自己評価にもつながることを明らかにした。近隣地域のプラスの効果は、高収入の居住者に対応する傾向にあり、マイナスの影響は低所得の居住者に対応する傾向が確認された。ただ、こうした傾向は、成長する地域と衰退する地域の間では顕著な違いがみられなかった。以上を踏まえると、成長する地域と衰退する地域の両方においても、遊休空間活用型都市農園などのような空間活用による地域形成の場を提供することが、同等の効果が期待できるとも考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、台湾台北市と花蓮県に赴いて現地調査を展開してきた。その際、多様な地域における農業活動や緑地の分布や利用現状について把握してきた。特に、花蓮県の事例調査では、遊休空間の転用による生態系価値の創出とエコツーリズムの展開に成功した経験を把握した。花蓮県の大農大富農園では、これまでは日本統治時代の名残でサトウキビの栽培が盛んだったが、近年は製糖業の衰退により、多くのサトウキビ畑を造林地として転換してきた。その中で、林業署の「花蓮エコロジカル・ネットワーク・マスタープラン」の支援を受け、台湾糖業が所有する一部の空地化した造林地を、ビオトープへの転換により、人間と生態系との共存に資するグリーンインフラとしての役割を持たせることができた。 日本では主に大阪市におけるアンケート分析に加え、福岡市を中心に都市緑地の現状調査を展開し、基礎データの収集と分析を行った。特に福岡市の場合は、都市緑地の景観要素と人間活動との関係に着目して、異なる社会的特徴を持つ人々が景観要素への好みやそれらによる緑地空間における活動への影響に着目した。その結果、土地利用や人口データなどを組み合わせた分析の結果からは、公園周辺の人口分布は、周囲の環境にあるスポーツ施設の存在と正の相関関係にあることを解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には今年度の段階的な成果を踏まえて、更に台北市や大阪市などへの現地調査を重ね、データ収集と分析も同時並行に推進する予定である。また、今年度の分析から得た結果についても論文としてブラッシュアップして、成果講評に向けた論文投稿なども進めていきたい。
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Research Products
(3 results)