2022 Fiscal Year Research-status Report
鳥海山山麓における農業近代化遺産としての混構造堆肥小屋の普及メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K14391
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
李 雪 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (20805915)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 堆肥小屋 / 乾田馬耕 / 石積み壁 / 混構造 / 鳥海山山麓 / 実測調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、堆肥小屋の誕生及び現存実態を明らかにするため、文献調査及び現地調査を行った。現地調査では、堆肥小屋の残存状況の良好な秋田県にかほ市畑福田を対象にし、現存する9棟の堆肥小屋を実測し、立地、石積み構法の特徴、と現在の用途も把握した。 秋田県の堆肥小屋の誕生は、文献調査に基づき整理した。 M19 年(1886)、農商務省の講師、酒匂常明が本荘を始め乾田法を指導した。M20 年(1887)10 月の勧業諮問会に乾田法実施に関する第2号議案「乾田法奨励について」が取り上げられ、乾田法は腐米改良事業の一環として行われ、耕地乾田化に対する補助金も設けられた。多くの農民は乾田化の有益性を確認し、乾田化する水田面積が広がっていった。乾田化の普及に伴い、耕地の耕起方法も従来の手打法から馬耕へと変化した。M24 年(1891)から県が馬耕教師の派遣を行い、M27 年(1894)に由利郡平沢町の有力地主らが乾田馬耕を導入しようとした。M37 年(1904)に県令『堆肥管理規則』、M38 年(1905)に県令『水稲乾燥実施規則』、『乾田実施規則』が発令され、「堆肥」、「乾田」、「乾燥」の三大原則を掲げながら強制的な勧農政策が実施された。『堆肥管理規則』に堆肥小屋の「四囲に土塀または溝を築造し、液汁の散逸及外部により水の流入するを防止する設備をなすこと」が明記された。 現存する堆肥小屋の中、8軒が道路沿いに配置されるのに対し、敷地の奥に配置されるのは1軒のみであった。外壁の張り替えや扉の新設等の改修がほとんどの堆肥小屋に見られ、現在は物置、車庫、物置兼車庫として使用されているのが多い。腰壁の石積み構法は整形された角石で組積造構法、間知石で乱積構法、亀甲積み構法、玉石をセメントで固定した構法が見られ、石柱の利用も混在していた。堆肥小屋は明治末期から建設されたため、小屋組に洋小屋の利用も確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目となる令和4年度は文献調査及び現地での実測調査が行われた。文献調査により、秋田県内の明治農法の普及及び堆肥小屋の誕生の関係性を明らかにし、現地調査では堆肥小屋の実測調査が行われた。グーグルマップのストリートビューを用い、秋田県内の他の市町村の堆肥小屋の残存状況の確認が実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査では、堆肥小屋の普及推進の一環として、明治期の後半から昭和初期まで堆肥品評会が実施され、堆肥小屋の建築奨励も行われたとの記述があったため、今後の研究は、各市町村の堆肥品評会及び堆肥小屋の建築奨励の実施状況を調査し、堆肥小屋の建設との関係性を明らかにする。 現地調査では、堆肥小屋の立地と敷地の関係性を検討し、聞き取り調査により当時の生産組織も明らかにする。
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Causes of Carryover |
昨年度の調査では、大学の公用車を使用したため、旅費は計画通りに支出できなかった。 今年度の調査にあたって、資料収集に支出する予定である。
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