2022 Fiscal Year Research-status Report
静電気力を利用した月レゴリス土壌の分級・選鉱システム
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22K14423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安達 眞聡 京都大学, 工学研究科, 助教 (90908386)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 月土壌粒子 / 選鉱 / 分級 / 月面探査 / 静電気応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,長期月面探査を実現するために不可欠な月土壌粒子の資源活用を行うために,不均一な月土壌粒子を粒径毎に分ける分級と成分毎に分ける選鉱に着目し,静電気力を利用した技術を開発すると共に静電場中における粒子の動特性を明らかにすることである.静電気力を利用した分級・選鉱技術は,機械的駆動部や液体・気体が不要であり,制御が簡単で小型化が可能である等と宇宙環境との相性が良いことから,将来の惑星探査技術の1つとして注目されている.これは粒径・成分によって外力のバランスや粒子の移動量に差が生じることを利用して分別する技術であるが,分級・選鉱システム中の月土壌粒子の帯電特性やそれが粒子ダイナミクスに及ぼす影響について詳細な理解が得られていなかった.本研究ではそれらを明らかにすると共に分級・選鉱の性能を向上させることを目的としている. 本年度は,特に選鉱技術に着目して研究を実施した.まず,粒子を振動搬送しながら帯電させる機構と静電場によって粒子を分別する機構を開発した.それを使用して月土壌粒子の主成分を持つ単一粒子を混合した試料と月の模擬砂について選鉱試験を行った.混合粒子について,帯電量と重量の比である比帯電量の違いを利用して選鉱が実施できることを確認した.一方,月の模擬砂についても同様の試験を実施したところ明確な選鉱性能を確認することが出来なかった.しかし,1粒子内に特定の成分濃度が高い小粒径の月土壌粒子に着目したところ,比帯電量の違いを利用した選鉱に成功した.このように月土壌粒子の選鉱を実現する上で粒径を小さくする摩鉱や小粒径粒子の分級などの前処理が重要であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の研究計画に基づいて,静電気力を利用した選鉱機構を開発し,静電場中における粒子動特性の解析などを実施した.まず,月土壌粒子の主成分を持つ単一粒子の混合試料を使用した選鉱実験を実施し,静電場中での粒子が理論計算結果と近い運動を見せて,それらが成分毎に分別可能であることを確認した.次に月模擬砂を使用した試験を行ったところ,混合試料のようには分別できず,小粒径粒子のみ選鉱可能であることを確認した.これは大粒径粒子では1粒子内に複数の成分をもつため粒子毎に静電気特性の違いが生じづらいためである.本年度の研究結果により,月土壌粒子の選鉱を実現するためには,小粒径粒子を抽出する前処理が重要であるという知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
月土壌粒子を選鉱するためには小粒径粒子を使用することが重要であるが,小粒径粒子は付着性が高く,それを利用するためには小粒径粒子のハンドリング技術が必要である.選鉱機構に小粒径粒子ハンドリング技術を導入して,選鉱性能への影響について調査を行う.また静電気力と同様に宇宙環境下での応用を考えると多くの利点を持つ振動や磁気力などを利用した選鉱機構や分級機構などについても研究を展開していきたい.
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果から,次年度は小粒径粒子を使用した選鉱試験を実施する予定であり,その場合,空気抵抗の影響が大きくなるため大気中での試験が困難である.また宇宙環境下での性能を確認するためには真空試験が重要となる.そこで本年度未使用額と翌年度請求した助成金とを合わせて真空試験装置を導入し,真空環境中での選鉱試験を次年度に実施する予定である.
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