2023 Fiscal Year Annual Research Report
多方向波群において破波を伴い発達する海洋巨大波の実態解明と新たな破波指標の確立
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22K14429
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金平 大河 京都大学, 防災研究所, 特定研究員 (50880019)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 砕波 / 多方向波浪場 / 粒子法 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
船舶が頻繁に往来する沖合は,沿岸域に比べ再生可能エネルギ賦存量の多い海域で,人類の欠かせない経済活動の場である.これら経済活動のさらなる発展には,最大の自然外力を与える海洋巨大波 の実態解明が不可欠であるが,その突発性故,海洋巨大波に対する合理的な設計外力や指針は十分に確立されておらず,人命にかかわる海難事故は後を絶たない.また,しばしば多方向波群となる沖合で発生する巨大波の幾何学的情報・破波現象は,海洋巨大波の形成過程に密接な関係があり,破波指標など従来の沿岸域 (1方向波群) において構築されてきた学術体系の適用は困難である.
このような社会的・学術的背景の下,本課題では,粒子法を用いた円形型数値水槽を用い,(1) 海洋巨大波の発達と破波現象の関連性解明,(2) 鉛直方向破波が生じる各種波浪条件を明確化,(3) 液滴飛散現象を含む破波現象に対し鉛直方向破波指標の確立を目的としている.鉛直方向破波時の流体物理量を実験的に取得するとともに,空間波形・破波時の流体加速度など, 実験では取得困難な物理量を数値流体力学的に取得可能にする.
本年度は2方向波群における破波現象の空間波形・破波時の流体加速度などを実験的に取得し本数値モデルとの精度検証を実施した.また、①広領域の波の伝播を高速に解く手法と②波が砕波する狭領域を高精度に解く手法のカップリングの開発に取り組み、カップリングモデルを開発した。さらに、開発したモデルを一方波群で発生する海洋巨大波と円柱の相互作用計算に適用し、実験と良好な一致を得ることを確認した。研究全体を通して、2方向波群における破波現象の実験データ取得と数値計算モデルの精度検証を行い、世界に例を見ない貴重な結果が得られた。一方で開発した数値計算モデルは破波現象の詳細な物理現象を捉えることはできず、鉛直方向破波指標の確立には至らなかった。
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