2023 Fiscal Year Research-status Report
数値計算と長期モニタリング結果に基づいた雪崩発生危険度の可視化技術開発
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22K14458
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
勝山 祐太 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (10877921)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 雪崩 |
Outline of Annual Research Achievements |
妙高・幕ノ沢雪崩試験地において、気象観測装置と雪崩検知装置を用いて今冬季の気象・積雪・雪崩発生状況を把握するための自動観測を行った。また、雪崩発生区において、無人航空機を用いた積雪分布の観測を計2回、超音波風速計を用いた風況観測を1回行うことができた。これら観測により、雪崩発生区の沢中央部や尾根南側で積雪が多く、尾根北側で積雪が少ないなどの特徴がみられた。これら特徴は昨年度の観測結果と整合的であり、北西季節風に伴う吹雪により、局所的に雪が吹き溜まったことによるものと考えられる。 また、現地観測と並行して、1959年から2011年の間に北日本で発生した雪崩災害の発生数を収集した。また、同じ期間の気象データと積雪モデルを使った積雪安定度の計算を行った。これらデータの統計関係を説明する確率モデルを開発し、北日本で発生しうる雪崩災害の発生確率を推定することが可能となった。また、このモデルを使用し、過去の雪崩災害を最適に診断する積雪安定度のしきい値をベイズ推定した結果、約1.4であることが分かった。積雪安定度は、積雪のせん断強度とせん断応力の比で定義され、値が小さいほど雪崩が発生しうる不安定な積雪状態となっていると診断される。今回得られた最適なしきい値は既往研究で示唆されていた値に近いものであり、積雪安定度に基づく積雪斜面の安定性評価手法の妥当性を支持する結果となった。また、客観的・定量的に最適なしきい値を求めた初めての例となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妙高・幕ノ沢雪崩試験地における気象・積雪・雪崩発生状況の自動観測や雪崩発生区における積雪観測などをおおむね計画通りに実施することができた。また、雪崩発生確率を推定するモデルの開発も進めることができた。加えて、当初計画には無かったが、雪崩が発生しうる不安定な積雪状態となっているかどうかを診断するための積雪安定度の最適なしきい値を調べ、既往研究で示唆されたものと近い値であることを客観的・定量的に初めて示すことができた。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
妙高・幕ノ沢雪崩試験地内の一部に積雪が残っているため、今冬季に実施した気象・積雪・雪崩発生状況の自動観測に係る撤収・データ回収作業が一部完了していない。これを雪解けが進み次第実施する。また、今冬季と同様に、次期冬季においても気象・積雪・雪崩発生状況の自動観測や雪崩発生区における積雪観測を実施する。さらに、初年度に開発した斜面積雪モデルと今年度開発した雪崩発生確率モデルを統合し、妙高・幕ノ沢雪崩試験地の過去の雪崩発生状況を再現できるかどうかに関する検証を行う。
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Causes of Carryover |
悪天候により当初予定よりも現地調査の回数が少なくなったため次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、急激に高騰している国際会議参加のための費用に充てる予定である。
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