2022 Fiscal Year Research-status Report
エリア防災における社会と企業に対するインパクト評価指標の開発
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22K14461
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Research Institution | Hyogo Earthquake Memorial 21st Century Research Institute |
Principal Investigator |
寅屋敷 哲也 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター, 主任研究員 (50758125)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 企業 / エリア防災 / インパクト指標 / エリアマネジメント / コレクティブインパクト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、継続的にエリア防災の実効性を高めている取組を実践しているエリアでは、参画企業にどのような価値が生み出されているかを明らかにし、多様な組織と協働したエリア防災活動の運営に活用できるような社会と企業の両面を含めたインパクト評価指標の開発を目的としている。2022年度の研究実績は以下の通りである。 (1)先行研究レビュー これまでのエリア防災活動に関する既往研究を調査し、約40編の関連論文を調べ、体系的に整理し、傾向を分析した。その結果、エリア防災に関しては、エネルギーや情報システム等の設備のハード対策に関する研究が多い一方、エリアで実施する訓練等マネジメントに関係するソフト対策に関する研究が少ない傾向が見出された。また、近年は、エリアで実施する事業継続に関する研究が増えている。例えば、地域継続計画(DCP)やArea-BCPのように、災害時においても地域の重要な活動を継続する概念での研究がみられる。以上の整理から、エリアマネジメントの一環として防災や事業継続に資する先行研究が非常に限られる現状が明らかとなった。 (2)エリア防災活動による災害時と平常時の価値の分析 都市再生緊急整備地域内の主要駅等周辺において、滞在者等の安全を図るための退避経路、退避施設、備蓄倉庫等の整備や管理、災害時の対応ルール、平常時の訓練の内容等を定めた都市再生安全確保計画を対象として、エリア防災活動を多様な主体が継続的な参画と平常時の価値の追求との関係性を分析した。具体的には、同計画を策定している29エリアを対象として、同計画の1年当たりの改定数と平常時の価値の記載項目数を数値化して関係性を整理した。ここで、平常時の価値とは、「地域コミュニティの醸成」や「都市の国際競争力の強化」が挙げられる。その結果、平常時の価値の追求の記載項目が計画書に多いエリア程、1年当たりの計画の改定数が多い傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度の研究計画では、エリア防災の実践している活動団体へのアンケート調査を実施する予定であったが、実際には、アンケート調査を実施する前段階の、エリア防災を実践している活動情報の把握までに留まった。 進捗状況が遅れている理由は、アンケート調査票の設計に時間を要していることである。当初は、エリア防災を実践している活動情報の把握を行い、その情報整理を踏まえて、アンケート調査により活動の実践内容や実態、その有効性・継続性に関する課題を把握することを想定していた。しかしながら、2022年度は、エリア防災を実践している活動情報について、都市再生安全確保計画の分析に時間を要し、調査票の設計にまで至らなかったことが大きな要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、本研究に係る研究エフォートを十分に確保して、2022年度の遅れを取り戻すことを目指す。2023年度は、アンケート調査票の設計、実施および活動の有効性や継続性が高い団体の抽出までを目標とする。具体的な推進方策は以下の通りである。 第一に、アンケート調査対象団体の選定を行う。これは、2022年度に行った都市再生安全確保計画やエリア防災計画の策定エリアの事務局団体や、エリアマネジメント団体を検討する。 第二に、アンケート調査票の設計を行う。調査の趣旨は、エリア防災活動における有効性や継続性が高い団体を抽出することである。また、最終的には、社会と企業の両面のインパクト指標を開発するにあたり、エリア防災活動における社会に対する価値のみならず、参画している企業への価値についても合わせて聴取できる内容に設計する。 第三に、アンケート調査を実施する。調査設計を踏まえて調査票を作成し、調査票の郵送による方法と、ウェブ回答の方法の2種類で実施して、回答方法に選択肢を持たせることで回答率を上げるよう工夫する。 第四に、アンケート調査結果を整理・分析し、エリア防災活動の有効性や継続性の高い団体を特定し、その特徴を分析することとする。 最終年度には、ヒアリング調査等の実施も踏まえて、インパクト評価指標の開発を進める予定とする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、当初の予定では、2022年度にアンケート調査の実施を計画していたが、先述の通り2023年度にアンケート調査の実施を遅らせたことによることが大きい。 使用計画としては、2023年度にアンケート調査を実施するため、調査票用紙の印刷費、郵送に係る費用、データ入力に係る費用に支出を回すこととする。また、アンケート調査の分析用にスペックの高いPCが必要になることが想定されるので、これについては、調査の進捗状況に合わせて、2023年度の購入に充てることとする。
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Research Products
(2 results)