2022 Fiscal Year Research-status Report
ダブルハーフホイスラー合成による新たな熱電性能向上指針の探索
Project/Area Number |
22K14468
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
今里 和樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (90903708)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 熱伝導率 / ハーフホイスラー / エネルギー変換 / 電気伝導率 / ゼーベック効果 / 新規物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目標は省エネルギー技術への適用を視野に熱エネルギーを直接電力に変換できる熱電材料の性能向上である。具体的には、4元系ハーフホイスラー材料を用いた新たな熱電変換の効率の向上指針提案を目指している。ダブル・トリプルハーフホイスラー材料は18電子の法則に基づいた組成設計によって結晶構造の安定化と性能の向上を実現できる可能性があるため性能向上を目指す材料設計指針として期待されている。
今年度は化学的知見に基づき様々な4元系ハーフホイスラーの合成を試みた。異相の析出や、合成時の組成ずれによって熱電性能が大幅に変わってしまうため、溶融、機械合金化、アニールなど合成、安定化方法の最適化と、プロセスの探索を行った。その中でトリプルハーフホイスラーの合成に世界で初めて成功した。トリプルハーフホイスラー材料において均一かつ高純度な材料合成方法の確立を行ったうえで、組成や、合成方法の異なる各試料の熱電物性および微細組織構造の測定をすすめた。合成したトリプルハーフホイスラー材料では従来のハーフホイスラー材料に比べて大幅な熱伝導率の低減が実現されていることが確認された。高い電気的特性と優れた機械的特性を示すハーフホイスラー材料においては、熱伝導率を下げることが大きな課題となっているため、この結果はトリプルハーフホイスラーの合成が熱伝導率を低下させる戦略として有効であることを示している。一方で、トリプルハーフホイスラー合成による規則度の変化は観測されず、従来のハーフホイスラー材料と同様の結晶構造となり、合金化によるキャリアの散乱の影響で電気的性質は低下した。熱電性能の向上にはゼーベック係数、電気伝導率を高く保ったまま、熱伝導率を低減することが求められるため、今後組成の最適化や別の組成において結晶構造を安定化させることでさらなる性能向上をめざす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつかの系においては単一相の合成が難しく、期待された熱電性能が得られなかったものの、初年度に新材料としてトリプルハーフホイスラーの安定的な合成に成功したことは大きな成果である。価電子バランスに着目した従来とは異なる4元系ハーフホイスラー材料を開発することで、熱伝導率の低減を実現できることが確認された。これは本研究課題の大きな目的のひとつであり、研究計画に基づき新たな4元系ハーフホイスラー材料を合成できたことは順調な進展を示している。今後はこの成果をもとにさらなる分析、新規組成の探索を進めて、より包括的な理解を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究計画に基づき新たな4元系ハーフホイスラー材料を合成できた。この材料系をもとに物性の最適化や、詳細な分析を進めることで、ダブル、トリプルハーフホイスラーに関する理解を深めていく。さらに新たに合成された新規組成を用いた熱電モジュールの作製をすすめ発電能力を実証することで、この新規材料の実用性についても調査していく。一方で、いくつかの組成では単一相の生成が難しく、期待された性能向上が確認できなかった。これらの系においても原因を探るとともに、新たなダブル、トリプルハーフホイスラー系の合成に挑戦していく予定である。
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Causes of Carryover |
効率的に実験をすすめられたため、物品・消耗品を節約することができた。引き続き効率的な実験を心がけるとともに、外部分析や人件費の使用による効率化も視野に予算の執行をすすめる。
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