2022 Fiscal Year Research-status Report
大規模な実験的物性データを用いた結晶構造と物性との関係性解明
Project/Area Number |
22K14474
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊谷 将也 京都大学, 複合原子力科学研究所, 特定助教 (00881054)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | マテリアルズ・インフォマティクス / 機械学習 / 材料工学 / グラフ構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、物性値と結晶構造との関係性を機械学習および解明することが目的である。今年度は、本研究における学術的問いの1つである「結晶グラフは3次元情報(原子配置など)が失われており、その失われた情報が学習や予測結果にどのような影響を及ぼすか」についての解明に向けた研究を行った。この問いを解明することで、MI分野において結晶構造の特徴化として主流となっている結晶グラフに不足している要素を明らかにでき、その上で結晶グラフの改良や結晶グラフ以外の結晶構造の新しい表現方法の開発等、様々な研究の展開が期待できる点で学術的に意義がある。 具体的には、説明変数を結晶グラフ、目的変数を元の結晶構造情報(結晶系、空間群等)とした機械学習を行った。学習データには、第一原理計算データベースMaterials Projectに収録された2018年の全データを利用した。機械学習手法には、結晶グラフを利用した代表的な先行手法であるCGCNN、およびより高精度な予測が可能な手法であるALIGNNを利用した。また、計画時点では想定していなかったが、本研究の中で新たに3次元情報を保持できる3次元の結晶メッシュの特徴化手法を提案できたため、新しい提案モデルと既存のCGCNN、ALIGNNを比較することで、結晶グラフベースの先行手法の問題点を明らかにすることに取り組んだ。 元の結晶構造情報の情報である結晶系や空間群に関する予測精度は、CGCNN、ALIGNNがそれぞれ50%~76%程度であるのに対して、提案手法は90%~98%程度と先行手法よりも高い精度であった。このことは、より三次元情報を保持した提案手法と比べて、結晶グラフをベースとする先行手法が3次元構造を少なくとも一部失っている可能性を示唆している。本研究の成果は、人工知能学会にて報告し、現在論文誌に投稿している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、結晶グラフの問題点を解明するために、結晶グラフベースの先行手法をベースに議論する予定であった。ところが、結晶構造を特徴化する新しい手法として3次元の結晶メッシュのアイデアが生まれ、先行手法との比較によって結晶グラフの問題点を当初の計画以上に議論することができた。さらに、結晶構造情報(結晶系、空間群など)に関して結晶グラフベースの先行手法よりも高精度に予測できることが確認できた。これらのことから、当初の計画以上の進展であったと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を進めていく中で、結晶構造の新しい特徴化手法の提案ができ、先行研究よりも精度の高い予測ができることが確認できた。これらの内容はすでに学術的価値が高いと考えられるため、次年度は今年度の内容を論文誌として投稿、および国際会議の発表を行うことを計画している。 また並行して次年度は、計画通り「結晶グラフと物性値の関係性を明らかにすること」に取り組む予定である。まずは計算可能な物性値である体積弾性率などの物性値との関係性を明らかにするとともに、その後実験的物性値との関係性まで明らかにすることを計画している。
|
Causes of Carryover |
今年度は、想定以上の成果が得られたこと、および国際学会が現地開催され始めていることから、本研究課題で得られた成果を国際会議の発表、および論文誌への掲載を行う計画で進めていたが、査読の結果が年度末であったこと、およびコロナ明けで参加者が殺到して例年より採択率が上がったことも相まって不採択であったことにより、確保していた予算に残額が生じた。この残額に関しては、次年度に学会発表および論文誌掲載を行う際に使用する。
|