2023 Fiscal Year Research-status Report
Control of electronic properties by improving crystalline quality of phosphorus-doped n-type diamond containing heavy metal atoms
Project/Area Number |
22K14478
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
片宗 優貴 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50772662)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | n型ダイヤモンド / 熱フィラメントCVD法 / リンドーピング / 重金属不純物 / 結晶成長 / 電気的特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,熱フィラメント化学気相成長(CVD)法を用いたリンドープn型ダイヤモンド膜の高品質結晶成長技術の構築し,フィラメント材からダイヤモンド膜に混入する重金属原子の電気的・構造的作用を半導体物性評価と結晶構造解析によって実験的に明らかにすることを目的としている. 2年目にあたる令和5年度は,熱フィラメントCVD法で得られるリンドープダイヤモンド膜の結晶品質の向上のため,成長パラメータの中で基板温度に注目して基板ステージ周りの改造を行い,ダイヤモンド成長中の基板温度の安定性及び制御性の改善を試みた.得られたリンドープ膜の表面形態を微分干渉顕微鏡を用いて観察し,結晶品質を評価するための指標とした.成長膜の表面に金属電極を形成し,比抵抗測定により電気的特性を評価した.また,カソードルミネッセンス測定により成長膜の欠陥構造を評価した. 基板温度の影響について,ステージ温度を900℃±100℃の範囲内で調整したところ,得られたリンドープダイヤモンド膜の表面形態に違いが観察され,温度の上昇に伴い鏡面に近い平滑表面が形成される傾向がみられた.成長膜の表面平滑性が改善に伴い結晶品質の向上が見込まれる一方で,表面形態とn型電気伝導の発現は必ずしも一致しないことが明らかになった.このことから基板温度で成長モードが異なりダイヤモンドへのリン原子の取り込まれ方が変化している可能性が考えられる.また,カソードルミネッセンス測定では,熱フィラメントCVD法で作製したリンドープダイヤモンドにおいて,マイクロ波CVD法の場合と類似した励起子発光を観測することができた.熱フィラメントCVD法では結晶欠陥に関連したBand-A発光強度が依然として高く,金属不純物との関係は不明であるが,さらなる結晶品質の改善が必要であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗は概ね当初の計画通りであり,熱フィラメントCVD法でのリンドープダイヤモンドの作製における成長パラメータと膜特性の関係が少しずつ明らかになってきている.熱フィラメントCVD法での成長パラメータを調整する中で膜中リン濃度 10^19 cm^-3前後のドーピングではある一定の再現性の確保することができた.予算の都合で基板ステージ周りの大幅な改造は難しかったが,これには基板-ステージ間の接触面の改善など成長時の基板の温度を安定化させた効果が大きかったと考えられる.課題として,室温領域でホッピング伝導を抑制してバンド伝導を優勢にするため,リンドーピング濃度の低減することがあげられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた結果からリンドーピングによりn型電気伝導が得られる温度領域は狭いことが明らかになった.熱フィラメントCVD法は原理上,基板温度の正確な把握が難しいため,ステージ温度とフィラメント温度との両面での基板温度の調整が必要である.そこで,フィラメント温度が結晶成長に与える効果について,可能な範囲で前駆体生成と基板加熱のそれぞれの効果を調査する.また,成長モード制御のため表面研磨状態やオフ角の揃った基板をより積極的に用いることで最適な成長条件を絞り込む.低濃度領域(リン濃度:10^18 cm^-3以下)でのドーピング制御について装置内部のクリーニングによる低濃度化を試みたが,残留リン化合物の影響の完全な除去は難しいことがわかったため,ドーピング効率の低減などの新たな成長パラメータ制御を検討する.
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Causes of Carryover |
前年度は,実験の実施に必要な消耗品であるダイヤモンド基板や実験の再現性改善のための基板表面の研磨工程などの費用に優先的にあてることで,物価上昇の影響によって研究遂行に支障が出ないようにした.旅費について,近年の為替の影響などで全体的な費用が高騰していることもあり,国際会議への参加のために研究費を次年度にあてることとした.
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Research Products
(8 results)