2022 Fiscal Year Research-status Report
無電解めっき法を用いたアンモニア分解用金属微粒子触媒のナノプロセッシング
Project/Area Number |
22K14495
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Research Institution | Kyoto Municipal Institute of Industrial Technology and Culture |
Principal Investigator |
大藏 要 地方独立行政法人京都市産業技術研究所, 京都市産業技術研究所, 次席研究員 (30806493)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | めっき / 触媒 / 水素製造 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性な金属微粒子を酸化物等に担持した金属担持触媒はエネルギー変換技術におけるキーマテリアルである。触媒金属には高活性な貴金属が多用されているが、希少性の観点より卑金属への代替が期待される。卑金属を用いた触媒の高性能化には、担持金属粒子の合金化による電子状態制御、または微細化・高分散化による活性場面積の増加が求められるが、従来の触媒調製法ではそれらを達成することが困難である。 本研究では、卑金属合金粒子の形成を精密に制御した金属担持触媒の新規調製法として、無電解めっき法によるナノスケール金属形成プロセスの適用を検討する。具体的には、めっき金属粒子の組成・粒径・分布を制御する因子の解明、めっき金属の電子状態・結晶構造と触媒作用の相関性の解明、性能向上に向けた金属微粒子の析出状態の最適化について検討し、得られた触媒を、水素製造(アンモニア分解)用触媒として評価することで、その実用可能性を検証する。 本年度は、めっき金属にNiを、担体に種々の金属酸化物を選択し、金属Ni粒子の分散状態に寄与する因子を解明するため、めっき金属の析出起点であるPd核の形成過程に着目した。担体をPd溶液中に分散させ、Pd核を担体表面に形成する際、その浴組成を溶存イオン種が安定に存在できる領域に保持することで、核の表面密度を一定程度調節可能であることを確認した。適切な浴組成を選択し、核の表面密度を変化(=金属析出サイト数を変化)させることで、各々のサイトにおける粒成長速度も変化するため、粒径の異なる金属Ni粒子を比較的均一に分散析出できることを電子顕微鏡による形態観察で確認した。一方、調製した触媒を用い、高温環境下でアンモニア分解活性試験を行ったところ、析出粒子の分散状態が必ずしも性能と相関しないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
めっき金属の析出起点となるPd核の表面密度は、担体をPd溶液中に分散させる過程で一定程度制御可能であり、これにより粒径の異なるNiめっき金属粒子を析出できることを明らかとした。これは、無電解めっき法が従来の触媒調製法に比べ、ナノスケールの金属形成の点において優位なプロセスであることを実証するものである。当初の計画通り、めっき金属粒子の析出制御性に寄与する因子について、基礎的な知見を得ることができた。 一方で、一般に金属担持触媒として好ましいとされる金属析出状態を実現しても、必ずしも高いアンモニア分解活性を得られないことが判明した。これは高温環境下の触媒反応時、めっき金属粒子の凝集に起因する活性場面積の減少及び結晶構造の変化による活性サイトの変質が、想定よりも激しく進行している可能性を示している。当初の計画の範囲内ではあるが、めっき金属粒子の触媒活性向上を狙う場合、加熱時の影響をより重視する必要があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
無電解めっき法で調製した触媒の活性を向上させるためには、高温環境下におけるめっき金属粒子の凝集過程及び結晶構造の変化を理解する必要がある。そこで、加熱処理がめっき金属粒子の微構造に及ぼす影響を解明し、それに基づいた最適な金属析出状態の実現を目指す。めっき金属粒子の分散状態及び結晶構造は、熱履歴の異なる触媒をTEM、XRDで評価することで明らかにする。 まためっき金属Ni(+Pd核)粒子に新たな金属(8~10族元素を想定)を合金化し、金属活性サイトの電子状態を変化させることで、高い触媒活性の発現を目指す。本合金系を無電解めっき法で析出させた例は極めて少ないため、まずは析出条件を明らかにする。得られた合金粒子の結晶構造や粒子内元素分布等をXRD、XPS及びTEM等を用いて明らかにし、触媒活性との相関性を検証する。
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Causes of Carryover |
令和4年度に計画していた国内学会について参加を見送ったため、また実験において当初の想定と異なる結果が得られたために、計画を一部変更した。それに伴う旅費および物品費が不要となった。 令和5年度は、当初の実験計画よりも詳細に、熱処理過程が触媒の状態に与える影響について検討する予定である。そのため申請当初予定していたよりも、多くの熱処理炉関係の物品を購入し、実験の試行回数を増やすことを計画している。
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