2022 Fiscal Year Research-status Report
迅速な骨再生を実現するキトサン/アパタイトナノ複合体の創製
Project/Area Number |
22K14502
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
片岡 卓也 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 助教 (40909678)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ハイドロキシアパタイト / キトサン / 有機/無機複合体 / 骨補填材 / タンパク質吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,生体骨と類似した特性を持ち,骨疾患の外科治療に伴い生じた骨欠損部位を補填して周囲組織と接合させることで周囲組織 (細胞) を活性化させ,迅速な骨の再生を実現する材料の創製を目的とした。具体的には,生体毒性を示さず骨欠損の治癒に有用とされるキトサンを骨の主成分であるハイドロキシアパタイト (HA) へ複合化させて,生体内の骨と類似した特性を持つキトサン/HAナノ複合体の合成を検討した。 本年度は,湿式法によりナノ複合体を合成した。キトサンの含有量の検討により,複合体の表面形態を制御できることが判明した。生体安全性を高めるためにサイズ毒性のない粒径の範囲でナノ複合体の合成を目指したが,ナノ複合体の粒径が大きく,粒径を制御した複合体が合成できなかったため,骨形成に有用で一次粒子径を小さくすることができるMg(II)イオンをHA結晶構造内へ導入し粒径制御を検討した。粒径の制御に成功した試料に対して,赤外分光分析によりナノ複合体表面の化学状態を評価した。その結果HAとキトサンの複合過程においてキトサン分子間とキトサン-HA(リン酸イオン)間の相互作用が見出された。またMg(II)イオンは複合体の結晶構造内部に導入された状態及び表面に吸着した状態で存在していることが示唆され,複合体へのMg(II)イオンの導入または吸着によって,複合体の一次粒子径は,複雑に変化することが判明した。詳細な導入状況についても今後調査が必要だと考えている。加えて,迅速な骨の再生を目指し,複合体への骨形成タンパク質の効率的な担持・徐放挙動についても評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,湿式法によりキトサン/ハイドロキシアパタイト (HA) ナノ複合体を合成し,キトサンの含有量の異なる複合体を合成した。形態観察の結果,キトサン含有量によって,複合体の表面形態を制御できることが判明した。しかしながら,生体安全性を高めるためにサイズ毒性のない粒径の範囲でナノ複合体の合成を目指したが,ナノ複合体の粒径が大きく,粒径を制御した複合体が合成できなかった。この課題を解決するために,骨形成に有用で一次粒子径を小さくすることができるMg(II)イオンをHA結晶構造内へ導入し粒径制御を検討した。その結果,サイズ毒性のない粒径での複合体の合成に成功した。粒径の制御に成功した試料に対して,赤外分光分析によりナノ複合体表面の化学状態を評価した。その結果HAとキトサンの複合過程においてキトサン分子間とキトサン-HA(リン酸イオン)間の相互作用が見出された。複合体中のキトサンは粒界に多く存在しHA間の凝集を促進するバインダーとして機能していることが分かった。またMg(II)イオンは複合体の結晶構造内部に導入された状態及び表面に吸着した状態で存在していることが窒素吸着等温線測定の結果及びX線回折パターンの結果から示唆され,複合体へのMg(II)イオンの導入または吸着によって,複合体の一次粒子径は,複雑に変化することが判明した。詳細なMg(II)イオンの複合体への吸着及び導入状況についても今後調査を進めていく予定である。次年度ではそれに加えて,迅速な骨の再生を目指し,複合体への骨形成タンパク質の効率的な担持・徐放挙動についても評価していき,タンパク質が変性せずに効率的に担持・徐放できる最適な複合体の表面構造の設計指針を見出していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
サイズ毒性のない粒径でのキトサン/ハイドロキシアパタイトナノ複合体の合成には成功したが,複合体中のMg(II)イオンの存在状態については未解明な部分が多いため,その分析が一つの課題になると考えている。この課題に関連して,迅速な骨の再生を目指し,複合体への骨形成タンパク質の効率的な担持・徐放挙動についても評価していき,タンパク質が変性せずに効率的に担持・徐放できる最適な複合体の表面構造の設計指針を見出すことも今後の課題になる。 最終的に,骨形成タンパク質をナノ複合体へ担持し骨欠損部位へ補填して周囲組織と接合させ,タンパク質を徐放させることで迅速な骨の再生を促すための技術開発を目指し研究を鋭意推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
予算執行毎に安価な試薬や物品を慎重に選定したため予定していた金額より少ない執行に終わった。そのため、次年度使用額が生じた。繰越された次年度使用額は有効に研究を加速させるために必要な物品や試薬の購入に使用し最終年度の研究活動を効率的に推進させる計画を策定している。
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Research Products
(1 results)