2022 Fiscal Year Research-status Report
結合の不均一性を含む局所構造を単位とする低熱伝導率材料の設計
Project/Area Number |
22K14505
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐藤 直大 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 研究員 (60896653)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 熱伝導 / 熱電変換材料 / フォノン / 局所構造 / 共鳴散乱 / 複合アニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでに先天的に低い格子熱伝導率を有する複合アニオン化合物として見出したMnPnS2Cl(Pn=Sb, Bi)の関連物質であるMnPnCh2X (Ch=S, Se, X=Br, I)およびCdPnS2Clについて、熱伝導率と結合の不均一性の関係を調べた。その結果、MnPnS2Clと同構造を有し、大きな結合の不均一性を示すMnPnSe2Br、CdPnS2Clは、構成元素の組み合わせに関わらず同程度の非常に低い格子熱伝導率を示すことが分かった。他方、結晶構造が異なるMnPnS2Brは比較的結合の不均一性の程度が小さく、やや高い格子熱伝導率を示すことが分かった。今後、このような局所構造の差異と形成される結合の関係を詳細に調べることで、効果的な格子熱伝導率制御方法を確立できると考えられる。この他にも、アンチペロブスカイト構造や層状ペロブスカイト構造などの複合アニオン化合物についてもフォノン計算を行い、結合の不均一性によって導入されるフォノン状態密度のユニバーサルな特徴を見出しつつある。極端に低い格子熱伝導率が予測された物質については、合成方法の探索を含めた実験的検証を開始している。 また、欠陥導入による局所対称性の破れが引き起こす強いフォノン散乱を同定するための計算ワークフローを開発中である。予備的な結果として、カルコパイライトCuFeS2や遷移金属ホウ化物MB2において、特定の種類の欠陥が強いフォノン散乱を引き起こし、顕著に格子熱伝導率を低減する効果を見出した。今後はより広範な物質系において、欠陥が引き起こす局所対称性の破れと強いフォノン散乱の関係を明らかにし、格子熱伝導率低減手法としての確立を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時に掲げた2つの目標それぞれについて新規な計算結果が得られているものの、実験的検証は開始したばかりであるため、総合的にはおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
複合アニオン化合物においては、カチオン/アニオン組成比が同一で類似の局所構造を有する物質であっても、細かい局所構造の差異によって結合の不均一性の程度と格子熱伝導率が異なることが分かった。次年度は、この起原について電子論的な観点からも考察し、結合の不均一性を決定する支配的な因子を明らかにする。また、欠陥によるフォノン散乱の本格的な計算を開始し、比較的単純な構造(立方晶など)を有する物質群における局所対称性の破れと強いフォノン散乱の関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度に現所属に定年制研究職員として着任し、次年度への繰り越し不可のスタートアップ資金が配分されたため、そちらから優先的に支出を行った結果、次年度使用額が生じることになった。次年度への繰り越し分は、主に物質合成をはじめとした実験的検証を加速させるために、ボールミル用粉砕メディア、熱分析用容器、焼結型などに用いる予定である。
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