2023 Fiscal Year Research-status Report
結合の不均一性を含む局所構造を単位とする低熱伝導率材料の設計
Project/Area Number |
22K14505
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐藤 直大 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 研究員 (60896653)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 熱伝導 / 熱電変換材料 / フォノン / 局所構造 / 共鳴散乱 / 複合アニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
複合アニオン化合物にしばしば含まれる歪んだ局所構造とフォノン輸送との関係を明らかにすることで、新たな低熱伝導率物質群を開拓する試みを継続している。複合アニオン化合物における局所構造を、1つのカチオンに1種類のアニオンが配位したユニットが複数種類存在する場合と(homoleptic配位)、1つのカチオンに2種類以上のアニオンが配位したユニットが存在する場合(heteroleptic配位)とで区別し、主にheteroleptic配位を有する物質群における結合の不均一性とフォノン輸送との関係を調べた。局所構造の歪みを定量化する指標としてdistortion indexを導入し、局所構造内の結合強度のばらつきと強い相関を示すことが確認できた。一部の化合物群についてはdistortion indexと格子熱伝導率との間にも相関が見出すことができているため、新規低熱伝導率物質探索の指標としても有効であると考えられる。 また、欠陥導入による局所対称性の破れが引き起こす強いフォノン散乱の詳細な機構と発現条件を明らかにすることを試みた。NaCl型やカルコパイライト型結晶構造をもつ物質では、カチオンサイトへの置換元素がしばしばオフセンター位置に導入され、顕著な熱伝導率低減効果をもたらすことが実験的に確認されている。種々の化合物と置換元素の組み合わせにおいてオフセンター位置への原子導入可否をDFT計算によって判定し、その化学的条件について傾向が見えつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複合アニオン化合物の局所構造とフォノン輸送との関連については、これらを統一的に説明し得る指標の導入や、それに基づく新規な低熱伝導率物質群の開拓など一定の進捗が得られているものの、実験的検証がやや遅れている。また、欠陥導入による強いフォノン散乱の機構については、オフセンター位置への不純物原子導入が鍵となることを見出しているものの、その詳細な機構解明には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出した新規な低熱伝導率候補物質群について合成条件を検討し、実験的検証を進める。欠陥導入によるフォノン散乱については、オフセンター位置に導入される不純物原子とその周辺環境を実空間・逆空間の両面から電子論的に考察し、オフセンター位置で安定化する機構を明らかにしたうえで、フォノン散乱への影響を考察する。
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Causes of Carryover |
当初想定していた出張旅費および消耗品費を別予算から支出した結果、次年度使用額が生じることになった。次年度繰り越し分は出張旅費および焼結型や石英管といった実験用消耗品などに用いる予定である。
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