2023 Fiscal Year Research-status Report
多能性幹細胞由来赤血球輸血製剤産生を目指した物理機械刺激による新規脱核機構の解明
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22K14545
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杠 明憲 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (10939276)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 赤血球輸血 / 再生医療 / 大量製造 / 多能性幹細胞 / 物理機械刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、赤芽球細胞形態異常を基準に培地改良を行なった。従来のMay-Giemsa染色による光学顕微鏡的観察に加え、透過電子顕微鏡による細胞オルガネラの観察を行なったところ、維持期不死化赤芽球株においてミトコンドリア形態異常が観察された。さらに分化後においてはオートファゴソームの多発発生があり、分化前維持期のみならず分化後の栄養条件の検討も必要と判断し継続して探索を行なった。結果としてミトコンドリア機能の向上を達成し、分化後の脱核率を改善させた。同条件に対して一細胞mRNA網羅解析 も実施し、現在結果を解析中である。 また昨年度に開始していた不死化赤芽球株のマウス輸注によるin vivo脱核誘導再現実験について、輸注後不死化赤芽球株が集積した肺からソーティングによって脱核中の細胞を採取した。必要な実験試行回数を確保できたため、in vitro培養条件と比較したmRNA網羅解析 を行った。解析結果からは赤血球最終分化においてGM-CSFなど数種のサイトカインの有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
不死化赤芽球株における光学顕微鏡レベルでの形態異常は2022年度中に観察完了していたが、透過電子顕微鏡レベルにおいてミトコンドリア形態異常を新たに認めたため、2023年度はミトコンドリア代謝にフォーカスした培地改良を行なった。赤芽球分化においては増殖期を模倣した不死化赤芽球株「増殖期」と赤血球への分化過程を模倣した「分化期」で必要培養環境が異なることを既に見出しており、検討すべき膨大な条件に対して確実に実験を繰り返したため当初予定よりも進捗がやや遅れている。結果として、細胞形態異常については分化後 正染性赤芽球段階までは正常に推移することがわかった。これにより、脱核前段階である正染性赤芽球を対象とした検討評価が可能になったため、本結果を利用して脱核現象を規定するファクターXの探索を続行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に行なった不死化赤芽球株の培養環境改良に伴い、脱核前赤芽球段階までの安定的な分化が可能となった。この脱核前赤芽球を利用して脱核現象の検証を進める。一細胞mRNA網羅解析から同条件の遺伝子発現プロファイルを入手しており、解析中である。またin vivo脱核誘導再現実験とそれに付随するmRNA網羅解析によって、現在の実験系に適用すべき生体内脱核条件についても候補がいくつかあがっており、2024年度にはこれらの因子についても検討を行う。最終的には物理機械刺激による脱核機構と組み合わせ、安定した多能性幹細胞由来赤血球産生システムを構築し、その解析によって生体内脱核機構の解明につなげていく。
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