2022 Fiscal Year Research-status Report
機械学習とDFT計算を用いた窒素酸化物の還元触媒となる多元金属サブナノ粒子の探索
Project/Area Number |
22K14563
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 将隆 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (70869544)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 計算化学 / マテリアルインフォマティクス / 第一原理計算 / 合金サブナノ粒子 / 窒素酸化物還元触媒 / 一酸化窒素 / 粒子群最適化アルゴリズム / データベース作成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一原理計算と機械学習の組み合わせにより、窒素酸化物を還元的に除去できる優れた触媒を探索し、効果的に反応を進行させるニ元金属サブナノ粒子の条件(成分、組成比、原子数など)を明らかすること、および理論計算により得られたこの物性予測の妥当性を実験によって検証することである。 探索対象は、申請者のグル-プで既に単一金属サブナノ粒子の合成に成功している第4周期から第6周期に属する金属元素同士の組み合わせとする二成分合金サブナノ粒子とした。また金属イオンが規則正しく錯形成できる配位サイトを導入した申請者のグループ独自の高分子(デンドリマー)ので合成できる原子数を参考に、原子数は12原子、組成比は4:8とした。 合金サブナノ粒子の計算モデルは熱力学的に最も安定な構造を使用することにし、その構造を求めるために第一原理計算と粒子群最適化アルゴリズムの組み合わせを用いた。粒子群最適化アルゴリズムは広域最適解の探索を得意とするメタヒューリスティクスの1種であり、本研究では計算結果が初期条件に依存しやすいという第一原理計算の問題点を補うために使用した。第一原理計算には計算化学ソフトウェアVASPを使用した。 成分・組成比・原子数の条件を偏りなく回帰モデルに取りこむのに十分な数として、220種類の無作為的に選ばれた条件でニ元金属サブナノ粒子モデルを作成した。さらに、そのうち無作為に抽出した40のサブナノ粒子構造に対する一酸化窒素の最安定吸着構造を第一原理計算で求め、その吸着エネルギーを計算した。得られた吸着エネルギーを、成分・組成比・原子数などの合金サブナノ粒子の特徴を示すパラメータと紐づけながらまとめ、データベースを構築した。 さらに、得られた計算モデルの正当性を評価する手段として、走査型透過顕微鏡および高角環状暗視野を用いた金属サブナノ粒子の構造測定の準備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では必要となる莫大な計算コストを満たすため、九州大学情報基盤研究開発センターが保有する高性能な大型計算機「スーパーコンピュータシステム ITO」を使用している。しかし初年度は研究遂行に十分な計算資源を確保することができず、当初の予定していた計算量をこなすことができなかった。またニ元金属サブナノ粒子モデルの構築にあたり、計算モデルの一部に構造最適化計算が完了するまでの時間が当初の見込みを上回ったものもあった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では必要となる莫大な計算コストを満たすため、九州大学情報基盤研究開発センターが保有する高性能な大型計算機「スーパーコンピュータシステム ITO」を使用している。しかし初年度は研究遂行に十分な計算資源を確保することができず、当初の予定していた計算量をこなすことができなかった。そのため、今後は研究遂行の遅れを取り戻すために2つの対策を実行する。 1.GPU利用 本研究で使用している第一原理計算プログラムパッケージVASPはGPUを利用することで計算速度が飛躍的に上昇する。そのため今後は計算機施設に対してGPUの利用申請を行い、計算速度の高速化を目指す。 2.ITO以外の計算機資源の活用 ITO以外の計算機施設も併用し、データベースに必要な計算データの収集を高速化する。そのために既に筑波大学の計算科学研究センターが保有するスーパーコンピュータCygnusに利用申請しており、既に承認されている。そのため、今後は計算速度の向上が見込まれている。
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Causes of Carryover |
当研究は九州大学が所有する大型計算機施設ITOを使用して行っているが、施設側が決定した計算資源の割り当てが当初予定していた量を大きく下回ったことにより、計算資源利用料が当初計画していた金額から大きく減少したため、次年度使用額が生じた。 今後は研究遂行の遅れを取り戻せるために、これまでの計算環境に加えて筑波大学の大型計算機施設シグナスなどの九州大学の大型計算機施設ITO以外の計算機施設の併用や、九州大学の大型計算機施設ITOの中でもより計算速度が高速であるGPUを利用する。さらにデータ解析を迅速に行うために、ケモメトリックスソフトウェアChemishを購入する。
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