2022 Fiscal Year Research-status Report
“常時殺菌性を示す”ステンレスナノ突起物の形状制御および殺菌性強化技術の確立
Project/Area Number |
22K14572
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
平野 満大 香川大学, 創造工学部, 助教 (10911092)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | SUS440C鋼 / 大気雰囲気熱処理 / 炭素含有量 / 熱処理温度 / 結晶構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、アルゴンプラズマエッチング技術によりマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS440C鋼)表面に形成可能な殺菌性ナノ突起物の形状ならびに分布、さらに殺菌性の制御を熱処理工程の導入により実現を目指している。研究実施者はステンレス鋼表面に形成されたナノ突起物の形状・分布は炭素含有量、結晶構造に依存することを既に発見している。そこで、2022年度は大気雰囲気熱処理によりSUS440C鋼の表面炭素含有量および結晶構造を制御するための処理条件の調査を行った。 種々の温度、処理時間でSUS440C鋼を熱処理し、その表面を走査型電子顕微鏡による金属組織観察とX線回折法により評価した。処理温度ならびに時間を増加させることで、SUS440C鋼表面に分散した金属炭化物の減少が確認できたため、炭素含有量が減少することが分かった。一方、X線回折法から処理時間を調整することでマルテンサイト相とフェライト相の割合を調整することができた。 分析結果から考察すると、熱処理温度、時間の増加は大気中の酸素とSUS440C表面の金属炭化物との酸化反応が助長し、脱炭現象の進行により炭素含有量の減少に至った。また、結晶相の変化に関しては、処理時間が短い場合は炭素原子が格子間に侵入することでマルテンサイト相が形成されるが、時間の増加に伴う脱炭現象の進行により炭素含有量自体が減少していき、結果としてフェライト相が優勢になることが分かった。故に、SUS440C鋼の炭素含有量、結晶構造の制御は、鋼表面での酸化反応が有用であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は大気雰囲気熱処理を導入することで殺菌性ナノ突起物の制御を目的としている。2022年度は熱処理温度、時間を調整することで炭素含有量と結晶構造の変化を定性的に評価することができた。その一方で研究計画では電子プローブマイクロアナライザーや電子線後方散乱回折法による定量評価まで実施する予定であったが、所属機関の異動により実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に得られた熱処理条件で処理したSUS440C鋼をアルゴンプラズマエッチングし、表面に形成したナノ突起物の先端および底部の直径、数密度を数値化することで定量的な構造解析を行う。その結果を踏まえて、炭素含有量、結晶構造とナノ突起物形成との因果関係を解明する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、実験に必要な実験機器類を当初の予算額より低価格で購入できたためでである。2024年度には微生物による殺菌性評価を行う予定であるので、2023年度に実験研究準備資金として翌年度分と合わせて使用する予定である。
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