2022 Fiscal Year Research-status Report
微小流路と音波・光波のインタラクションを利用した細胞外微粒子分離分析法の開発
Project/Area Number |
22K14582
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
津山 慶之 東京医科大学, 医学部, 客員研究員 (90914119)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マイクロ流体工学 / 細胞外微粒子 / 音響定在波 / アコースティックフォーカシング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外微粒子(EV: Extracellular Vesicles)は、生体内の情報伝達や細胞間コミュニケーションを担っているため、EVの組成や機能の包括的な理解によって疾病のメカニズム解明、診断や治療法の開発につながることが期待される。EVのサイズは直径50-1000 nmまで多岐に渡り、サイズによって内包物も異なることが報告されているが、EVのサイズと機能の関係については不明な点が多い。これを解明するためには煩雑な処理を必要とすることなくEVをサイズに基づいて分離する技術が求められる。そこで本研究ではマイクロ流体デバイスと音波・光波のインタラクションを利用した新規微粒子分離分析法を開発することを目指す。2022年度は主として微小流路と高調音響波を利用した微粒子の操作・分離法について検討した。ガラス基板に作製したマイクロ流路に対しピエゾ素子のオーバートーン発振を利用して高調音響波を発生させることで直径500 nmと1.3 μmのポリスチレン粒子を流路中心に整列させることに成功した。また、波数の異なる複数の高調音響波を同時に印加することによって粒子の整列位置を流路内で連続的に変化させることにも成功した。さらに、分岐を持つマイクロ流路に対して本手法を適用することで、微粒子の濃縮・希釈を制御可能なデバイスを実現することができた。電圧の強度や周波数、印加時間を制御することで流路内において自在な粒子位置制御ができることも示された。粒子を移動させる音響放射力は粒子サイズに依存するため、本手法を用いることでサイズに基づいた微粒子の分離が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では初年度で細胞外微粒子のサイズ分離に取り組む予定であったが、実験を進める中で現状のデバイスとシステムでは性能が不十分であることが示唆された。そのため、手法や設計に関して再度考え直す必要がある。一方で複数の高調音響波の印加によって複雑な粒子操作が実現できるなどの研究開始時には想定していなかった新しい知見を得ることができた。以上を総合的に鑑み、やや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外微粒子を操作・分離できるようにデバイスやシステムを改善、最適化する。また、微粒子のサイズを計測するための光学システムを設計・構築し、音響波によって整列した粒子の信号計測にも取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度に購入予定であった計測機器について実験結果を鑑みて適した装置を購入した方が良いと考え、今年度の購入を見送った。また、過去に作製したデバイスを暫定的に使用することでデバイスの加工に使用する予定であった予算を使用せずに済んだ。以上により次年度使用額が生じた。そのため、来年度は計測機器の購入やデバイス作製費に充てる予定である。
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