2022 Fiscal Year Research-status Report
円盤状強磁性薄膜を用いた高効率な光-マイクロ波変換器の創出
Project/Area Number |
22K14589
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久富 隆佑 京都大学, 化学研究所, 助教 (80870435)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁気光学 / 量子光学 / 角運動量 / マグノン |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、本研究遂行に必要なサンプル作製手法の確立とその評価、そして光学系の設計を行った。本研究では、強磁性マグノンを用いた高効率な光-マイクロ波波長変換器の創出を目指している。具体的なステップとして、(1)円盤状強磁性単結晶薄膜作製、(2)強磁性共鳴による作製した薄膜の評価、(3)強制励起された薄膜内の強磁性マグノンによって発現するマグノン誘起ブリルアン散乱の定量的観測を想定している。それらを完遂することによって、創出した光-マイクロ波波長変換器の性能評価を行うことが可能となる。
そこで、まず(1)円盤状強磁性単結晶薄膜作製を行った。基板はガーネット構造を持つ強磁性体用の基板として代表的な、ガドリニウムガリウムガーネット(GGG)基板を用いた。その基板上に非常に長寿命の強磁性マグノンモードを有することで知られるイットリウム鉄ガーネット(YIG)単結晶をRFマグネトロンスパッタリング装置を用いて成膜し、900 ℃で8時間アニールすることにより単結晶化させた。さらにフォトリソグラフィーとアルゴンイオンミリング装置を用いてドライエッチング加工を施すことにより、直径約100 μm、厚さ約1 μmの円盤状強磁性単結晶薄膜を作製することができた。次に(2)作製した円盤状YIG薄膜の強磁性共鳴測定による物性評価を行った。本研究では、YIG薄膜の面直方向に静磁場を印可し、強磁性スピン集団を飽和させることで発現する均一歳差運動モード(Kittelモード)を用いて光-マイクロ波変換を行う予定である。そこで、薄膜面内方向に交流振動磁場を加え、強磁性共鳴現象の観測を行った。その結果から、Kittelモードの共鳴周波数・寿命・マイクロ波との結合強度の評価を行うことができた。さらに、(3)強磁性マグノンを用いたマグノン誘起ブリルアン散乱実験に向けた光学系の設計も完了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行に必須なステップである「サンプル作製手法の確立」ならびに「強磁性共鳴を用いた評価」が順調に進展しているため。さらに、強磁性マグノンを介したマイクロ波から光への波長変換実験を行う準備として、光学系の設計も完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2023年度では、作製した円盤状強磁性薄膜試料を用いて、マグノン誘起ブリルアン散乱の観測を目指す。さらにマイクロ波-光間の変換効率の定量評価を行う。
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