2022 Fiscal Year Research-status Report
古典-量子情報科学技術の融合へ向けたスピンエキシトニクスの創生
Project/Area Number |
22K14591
|
Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
千葉 貴裕 福島工業高等専門学校, 一般教科, 講師 (90803297)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | スピントロニクス / トポロジカル物質 / エキシトン |
Outline of Annual Research Achievements |
エキシトンのスピントランジスタへの応用を目的として、三次元トポロジカル絶縁体(3DTI)ヘテロ接合における界面状態に関して研究を行った。3DTIは物質内部が絶縁体であるが表面は電子構造のトポロジーによって保護されており、高速かつ低散逸で電気を流すことができる。さらに注目すべき特性として、表面に電気を流すことでスピンが生じる「スピン運動量ロッキング」と呼ばれる性質がある。先のヘテロ接合では3DTIの上下の表面間での反転対称性の破れを反映して、電気伝導を決めるバンド構造が電子多数側と正孔多数側にシフトする。そのため3DTIから成るトランジスタ構造において、ヘテロ接合を想定したバンドエンジニアリングによりスピンをもつエキシトンを容易に設計できることが期待された。そこで本研究は、3DTI/絶縁体接合系において界面の電子状態を理論的に明らかにすることを目指した。 第一原理バンド計算に基づき、まず3DTI/絶縁体接合系における界面電子状態の計算を行った。特に界面の制御性の観点から3DTIとして、その姉妹物質である三次元トポロジカル結晶絶縁体(TCI)を想定した。TCIはその表面に結晶の対称性を反映した特殊な金属状態をもつため、結晶歪みによりその対称性を破ることで界面電子状態の設計が可能になる。次の各超格子構造:SnTe/PbTe,SnSe/SnTeに対して第一原理バンド計算を行い、界面の電子状態の層数・歪依存性、及び界面バンドギャップ(m)の大きさを見積もった。その結果、トポロジカルな界面状態の発現自体が各層の厚さと歪の大きさに強く依存することが明らかになった。この結果は界面状態を単純化した数理モデルによる予想と異なるものであった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においては、令和4~5年度は「バンドエンジニアリングによるトポロジカル絶縁体表面でのエキシトンの設計」を目標としていた。「研究実績の概要」にて述べた成果は、エキシトン設計のための有望な系であるトポロジカル結晶絶縁体のヘテロ接合を調査できた点において一定の成果が得られたものと考えている。以上の点を踏まえて、本課題はおおむね当初の計画通りに進展しているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度では、ヘテロ接合系としてSnTe/PbTe,SnSe/SnTeに限定して第一原理バンド計算を行ったが、今後は他の類似材料との組合せも調べる予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由としては、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって出張の機会がほとんどなくなり、旅費の支出が予定よりも少なくなったとによる。次年度使用額の用途については、2023年度に複数台の高性能ラック型計算機を調達し、計算機資源のより一層の強化を図る予定である。
|