2022 Fiscal Year Research-status Report
生体分子表面・界面の電位分布をナノスケール計測する液中AFMの開拓
Project/Area Number |
22K14602
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
平田 海斗 金沢大学, 新学術創成研究機構, 博士研究員 (50909984)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 液中電位計測 / オープンループ電位顕微鏡 / 生体分子 / 脂質二重層膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで独自開発を行ってきた原子間力顕微鏡ベースの液中電位計測技術である液中オープンループ電位顕微鏡(OL-EPM)を初めて生体分子の計測へと応用する。それに伴い、生体分子計測時の電位可視化原理・電位値の定量性・探針状態の影響など理解できていない面や解決すべき課題が複数ある。本研究期間の目的では、生体膜の基本構造である脂質二重層膜を基本試料として電位計測を行い、本技術が生体分子計測へと応用可能であることを実験的に示すこと、加えて電位可視化メカニズムを解明することである。 本年度では、まずOL-EPM計測を行うための基盤技術の確立を行った。具体的には、支持脂質二重層膜(SLB)を導電性基板上へと展開する手法と柔らかく高周波な超小型カンチレバーの利用プロトコルの開発を行った。それらを用いて有電荷SLBの表面をOL-EPMで電位計測することを試みた。これら開発した基板作製プロトコルにより、DOEPC・DOPGと呼ばれる正・負電荷脂質をそれぞれ導電性基板上へ展開し、超小型カンチレバーを用いてOL-EPM計測を行った。各有電荷脂質の測定結果は、それぞれ基準となる基板よりも電位が高い、低いといった各脂質で異なる電位傾向を示した。得られた結果は、脂質頭部の電荷を強く反映した電位と解釈しているが、その電位可視化原理の解釈や、SLBが絶縁膜であるにも関わらずOL-EPMで電位計測できる理由などについては不明である。これらについては次年度で詳細に探っていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料作製方法のプロトコル確立、カンチレバーの開発共に成功しており、本年度で目標としていた脂質二重層膜の液中電位計測に成功している。また、脂質分子の頭部を反映していると思われる電位分布の結果が得られている。これら現状の研究進捗の状況を総合して考えると、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、単一の流動性脂質を用いているが、非流動性脂質を添加し、異種混合SLBの相分離膜形成を試みる。これを用いてOL-EPMで計測を行えば異なる電荷をもつSLBを同視野角で計測することが可能である。また、OL-EPM計測の際に探針先端から受ける力(短距離力)に加えて、レバーや探針中部から受ける力(長距離力)がオフセットとして得られる電位に重畳している。これにより、計測される電位の局所性が低下していると考える。これらを比較的抑制するために、探針先端以外を絶縁体薄膜で覆った特殊探針の開発にも取り組む。 昨年度まででOL-EPMで有電荷SLBの計測に成功しているが、その電位可視化原理の解釈や、SLBが絶縁膜であるにも関わらずOL-EPMで電位計測できる理由など不明な点が多い。次年度ではそれらの解明に取り組む。 電位可視化原理の探求では、異種混合SLB上で電位の距離依存性を取得し、得られた電位の解析をより詳細に行う。また、OL-EPM計測で使用した試料・電解液と同じ条件を用いてゼータ電位計で平坦基板のゼータ電位を測定し、OL-EPMで測定された電位との相関関係を調査する。 OL-EPMでSLBの電位計測が可能な理由を探索するため、有限要素法を用いたCOMSOLを利用して、OL-EPM計測と比較的近い実験系を組み立て、簡易的なシミュレーションにより、探針(導電性探針)-試料間(絶縁薄膜/導電性基板)へ交流バイアスを印可したときに電界がどう掛かるのか調査を行う。
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Research Products
(8 results)