2023 Fiscal Year Research-status Report
Visualization of Monolayer Structures Specifically Formed by Functional Organic Materials at the Substrate Interface
Project/Area Number |
22K14604
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩谷 暢貴 京都大学, 化学研究所, 助教 (60822963)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 赤外分光法 / 高分解能 / 有機半導体 / 薄膜 / 分子パッキング / 結晶多形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度に構築した赤外分光法を用いた高分解測定を高性能有機半導体材料であるベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体(Ph-BTBT-C10)の構造解析に応用した.その結果,この化合物が"バルク相"と呼ばれる結晶構造をとるとき,フェニル基のCH面外変角振動バンドが2本に分裂することを観測した.他方,別の結晶構造である"薄膜相"を形成するときには,このバンド分裂は起こらないことも観測した.詳しく解析することによって,このバンド分裂がバルク相のヘリングボーン構造に由来するDavydov分裂であることを明らかにした.この発見により,Ph-BTBT-C10の結晶多形をスペクトル解析に基づいて識別できるようになった.実際に,CH面外変角振動バンドの形状に着目した解析によって,Ph-BTBT-C10のスピンコート薄膜を大気中に放置すると,わずか数時間以内に結晶構造が変化し始めることを突き止めた.この構造変化は従来のX線回折を用いた測定では捉え切れないほどわずかなものであり,高分解能の赤外分光法を用いたからこそ解析できたといえる.これらの結果は,高分解能の赤外分光法が分子パッキングの構造解析に有用であることを示すとともに,本課題の目標である単分子膜構造を可視化するための道を開くものである. 以上のようにして,本年度は高分解能の赤外分光法を機能性有機材料に応用することで,本手法の有用性を実証するとともに,分光学に基づく構造解析の基礎を固めた.これにより,単分子膜の構造を分子パッキングの観点から明らかにするための道筋をつけることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に構築した解析手法が薄膜構造の解析に有用であることを示すことができ,本課題を遂行する目処が立ったため.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した解析手法に基づいて,機能性有機材料の単分子膜構造を解明する.
|
Causes of Carryover |
当該年度の最初に取り組んだ研究で想定外の良い結果が得られたため,当初本年度に予定していた研究を一部次年度に後回しすることにした.それに応じて当初予定していた使用金額の一部を次年度に繰り越す必要が生じた.
|
Research Products
(26 results)