2022 Fiscal Year Research-status Report
窒化物光デバイスの高効率化に向けた光電子・発光融合分光分析の創製
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22K14614
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
市川 修平 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (50803673)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 窒化物半導体 / 時間分解 / 光電子分光 / フォトルミネッセンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、次世代光デバイス用材料として注目されている窒化物半導体に対して、従来から行われてきた発光分光分析に加えて、励起状態に対する紫外光電子分光分析を融合した新奇評価手法を開拓し、キャリアダイナミクス制御にむけた指針を得ることを目的としている。 今年度は、フェムト秒レーザをポンプ・プローブ光に用いた時間分解二光子光電子分光測定系(Tr-2PPE)を構築し、InGaN/GaN 量子井戸(QW)に励起された電子の緩和過程を、バンド端発光を得ることなく検出することを試みた。 井戸層のIn組成が25%、井戸幅2~6 nmのQWに対して室温下で測定を行った。いずれの試料も室温では非輻射再結合が支配的であり、とくに井戸幅6 nmの試料では室温下でバンド端発光が殆ど得られないことを確認した。励起光源となるポンプ光としてTi:Sappレーザの第二高調波(波長400 nm)を用い、第三高調波(波長267 nm)を光電子放出のためのプローブ光として試料に照射した。各パルスの光路差を制御することで高い時間分解能を有するTr-2PPE系を構築した。 試料に対してTr-2PPE測定を行った結果、励起電子が時間と共に再結合過程により減少することを確認した。励起電子の緩和はシングルexponential型を呈しており、見積もられた緩和寿命は井戸幅2 nmのQWで120 ps、井戸幅6 nmのQWで40 psであった。一般にInGaN QWの輻射再結合寿命はnsオーダー以上の値であることから、見積もられた緩和寿命は非輻射再結合寿命の影響を支配的に受けたものであるとが裏付けられた。これらの結果から、バンド端発光を伴わない遷移過程が支配的な試料であっても、Tr-2PPE測定により緩和寿命測定が可能であることが明らかになった。また、窒化物半導体の発光素子作製についても別途順調に研究が進行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、窒化物半導体に対して光電子分光と発光分光を融合した測定を行い、バンド端発光を伴わない遷移過程が支配的な試料であっても、Tr-2PPE測定により緩和寿命測定が可能であることを明らかにした。さらに、得られた測定結果から、欠陥の増加に伴って非輻射遷移確率が増加する様子を電子分光の観点から評価することに成功した。上記のことからも、研究は当初の予定対して遅れることなく順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、光電子分光と発光分光を融合した基本的な測定法を確立した。また窒化物半導体光素子の結晶成長やデバイスプロセスについても順調に研究が推進された。次年度以降は、実際に窒化物半導体における量子井戸界面でのキャリアダイナミクスや表面再結合の影響の評価など、超小型・高精細な「マイクロLEDディスプレイ」の実現にむけて制御が求められる事項についても評価を展開していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究推進に必要な光学除振台を設備として購入し導入する予定であったが、別途推進している研究の一環で光学除振台が導入され、本研究推進にあたっても十分な研究領域を確保することができたため、未使用が生じた。 次年度、この未使用分は光学実験のための光学部品購入を中心に充てる予定である。
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