2022 Fiscal Year Research-status Report
光量子情報処理のための高速超伝導光子数識別器の研究
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22K14615
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三津谷 有貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70784825)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超伝導転移端センサ / 光子数識別器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、光量子計算のための超伝導光子数識別器の動作速度の高速化に関する研究を実施している。本研究では、新たに超伝導材料の検討から始め、特にモリブデンを候補として超伝導転移端センサ型の光子数識別器の開発を行う。これにより高い計数率特性を有する検出器を実現することを目的としている。
高計数率特性を実現しつつも、光子数識別能を失わない(エネルギー分解能を維持)するためには、それらを両立しうる超伝導転移温度を有する超伝導転移端センサの開発が必要となる。本研究では比較的高い超伝導転移温度を有するモリブデンを用いて、また、常伝導金属として金を用いて、これらの近接二重薄膜によって超伝導転移温度を調整することとした。
初年度はモリブデン・金の二重薄膜の設計と開発を実施した。まず、高速性とエネルギー分解能を両立する超伝導転移温度として、700 mK程度を目標値として設定した。モリブデン単体の超伝導転移温度は920 mK程度であるため、これをモリブデン・金の近接二重薄膜によって700 mK程度まで低下させる。この膜厚の設計として、Usadel方程式を用いて近接二重薄膜の転移温度を計算するコードを開発した。それによってモリブデンの厚さ30 nm、金の厚さ2 nmによって704 mK程度の超伝導転移温度を得られることが分かった。また、スパッタ装置において実際にモリブデンの成膜を実施し、スパッタレートの算出を行った。これにより、所望の厚さを有する薄膜の作成を行うための条件を導き出すことができた。これにより、次年度以降において、実際に光子検出器を開発する準備を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は高速性とエネルギー分解能を両立しうる転移温度を有するモリブデン・金の近接二重薄膜を設計・開発することを目的とした。これに関して、まずUsadel方程式を元にした近接二重薄膜の転移温度計算コードを開発して、これによって、所望の転移温度を実現するためのモリブデンと金の膜厚を算出することができた。また、実際にスパッタ装置を用いて、これらのスパッタを実施し、スパッタレートの算出を行い、所望の膜厚を得るための条件を導き出した。これによって、次年度以降で光子数検出器を作製するにあたっての準備を完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き、研究計画に従って研究を実施する。次年度以降は、モリブデン・金の近接二重薄膜を用いて、実際に超伝導転移端センサを開発し、その性能評価を実施する。また、研究成果は国際学会等において発表を実施する予定である。
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