2023 Fiscal Year Research-status Report
赤色発光体を用いた遠隔線量計と廃炉に向けた炉内線量推定法の開発
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22K14628
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石澤 倫 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任助教 (10911125)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 近赤外発光シンチレータ / 高線量率場 / 高融点材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、原子炉内部のような高線量率場でも使用可能な近赤外発光シンチレータと光ファイバーならびに低線量領域に設置した光検出器からなる遠隔線量計について、特にガンマ線検出用シンチレータに関する研究開発に取り組んだ。具体的にはコアヒーティング法により育成したYb1%添加La2Hf2O7(Yb:LaHO)結晶に関して、その特性試験ならびに、Yb:LaHOを組み込んだ遠隔線量計の高線量率場における実験結果を解析・評価した。 特性試験の一環として行ったフォトルミネッセンス測定では、Yb:LaHO結晶は975 nmと1030 nm付近にそれぞれ強い発光を示し、それぞれ883,906,916 nmと885,905,916,977 nmの励起光に起因するものであった。またラジオルミネッセンス測定では975 nmに発光ピークを示し、Yb:LaHOの残光強度は既存の赤色発光シンチレータであるCr:α-Al2O3(ルビー)結晶の11%程度であった。Yb:LaHOに関する透過率測定で示された977 nmの吸収ピーク(透過率:29%)も踏まえて考察すると、Yb:LaHO結晶は975 nmをピークとする発光の一部を自己吸収することで、1030 nmをピークとする発光の励起光としても作用させていることを示唆していた。 60Coのガンマ線による高線量場(0.18-2.1 kGy/h)での遠隔線量計の実働試験では、Yb:LaHO結晶を用いた場合、信号対雑音比(SNR)は1 kGy/hにおいてルビー結晶の1.9倍であり、ダイナミックレンジの下限はYb:LaHO結晶とルビー結晶とで同程度であることを明らかにした。Yb:LaHO 結晶のSNRと残光強度の結果から、Yb:LaHO 結晶はルビー結晶よりも遠隔線量計に適したシンチレータであることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2400℃以上の融点を持つ材料は結晶育成が難しく、それらの透明体結晶の材料探索やその特性評価が進んでいない。本研究では近年考案されたコアヒーティング法により融点が2418℃を有するYb1%添加La2Hf2O7の結晶に成功し、その特性試験を行うことができた。また、高線量率場で取得したデータの処理方法を体系化し評価することで、Yb1%添加La2Hf2O7の結晶を用いた遠隔線量計の論文化に至ることができた。さらには、コアヒーティング法にて育成に成功したNd添加Lu2O3結晶についても遠隔線量計に組み込み、60Coのガンマ線による高線量率場で実働試験を完了した状況にある。Nd添加Lu2O3結晶は有効原子番号の観点からYb添加La2Hf2O7よりもガンマ線検出用結晶として有望で、実働試験の結果は論文としてまとめる予定である。ガンマ線用として有望なシンチレータの候補を複数開発できたことからも、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は引き続きガンマ線検出用結晶の開発を進めつつ、アルファ線検出用の結晶開発も実施する。さらにはモンテカルロシミュレーションコード等も活用し、シミュレーションによる結晶サイズの最適化等にも取り組み、本研究に関して論文化を進める予定である。
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Causes of Carryover |
ガンマ線検出用の結晶の材料探索を優先し、本年度のα線検出用の結晶開発に係る費用とシミュレーション用PC等の購入を保留したため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額については2024年度の研究開発費用として計上する予定である。
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