2022 Fiscal Year Research-status Report
エントロピー効果を最大化して巨大カチオンを安定に捕捉する籠状キレート配位子の開発
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22K14629
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永田 光知郎 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (10806871)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クラウンエーテル / 安定度定数 / アルファ線 / バリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまで水中では安定な錯体を形成しないラジウムやアクチニウムなどの巨大なカチオンを捕捉するキレーター分子の開発を目的としている。イオン半径が1.2オングストロームを超えるカチオンの安定な配位数や配位構造は錯体化学の分野でも未知の領域である。また、これらのカチオンを安定に錯体化する手法を確立することができれば、アルファ線を放出する放射性同位元素(RI)を安全に投与でき、新たながん治療を世界的な普及への貢献に資すると考えている。 本年度は、まず、新規に合成した配位子ならびに剛直な配位子骨格を有する配位子の合成を行った。これらの配位子を用いて、Ra2+と同族でアルカリ土類金属イオンであるSr2+及びBa2+ならびに各種ランタノイドイオン(Ln3+)を用いて、錯体合成の手法を確立した。各錯体の単結晶X線結晶構造解析により分子構造を決定した。得られた各錯体についての安定性評価を電位差滴定によって行った。また、これらのさらに、現在までに応募者が合成した10配位環状キレート配位子を用いた場合の結果と比較すると、同程度の熱力学的安定性を有することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属研究室が変わったことにより、合成実験に必要な設備等の立上げや研究体制の構築から始めているため、予定よりも研究の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
目的としていたキレート配位子や錯体の合成はできたものの、現状では錯体形成時の等温電位差滴定装置のデータ取得方法の確立が行えていないため、現在、外部有識者に連絡を取って協力を依頼している段階である。この手法を確立することで、巨大なカチオンを安定に捕捉する場合にはエンタルピーとエントロピーのどちらを有利にすべきであるかを明らかにしていきたい。加えて、ラジウム錯体の合成や溶液中の構造を明らかにするためのXAFS測定にも取り組む予定であり、まずはバリウム錯体の評価を行うところから始める。また、新たな所属先の研究室では新たに相対論を取り入れた量子化学計算を行える設備が整っているため、バリウム錯体に基づいたラジウム錯体の構造を比較するなど行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究室を移動することになり、移動先で研究環境の立ち上げの為の予算を確保するため。化学合成実験用の減圧濃縮装置、ガス配管等を年度開始早々に導入する予定である。
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